影山貴彦のウエストサイドTV 【17】「女性が失望しないメディア界を」
2020.07.27
女子大の教員を長らくしていることも関係はあるのでしょうが、最近特に、男性よりも女性の方が優秀だな、と感じることが増えました。親しくしているメディア業界の偉い方(男性)が、「ここだけの話、今、大学生を優秀な順番で採用したら、女性ばっかりになるっ!」と、こっそり教えてくれました。あ、すでにこっそりではなくなってしまいましたね。(笑)
日々、大学で講義していても、『打てば響く』と申しますか、『明るい』と言うのでしょうか、なにせ講義のやりがいを感じることが少なくありません。もちろん、男子学生がどうこうとディスるつもりは全くありません。究極は「個人」であることも良く理解していますが、一般的に申し上げて日々接する女子学生に比べ、街を歩く若い男性たちが、どことなく大人しく映るのは、あながち気のせいでもないようなのです。
仕事柄、メディアでこうしたコラムを書いたり、コメントしたりすることが結構あります。担当に付いてくださる方の男女比率が、ここ数年で男女逆転したのではないか、と感じるほど、女性と仕事を共にすることが増えました。やはり優秀な方が目立ちます。勤務する大学は前述のとおり女子大ですし、メディアで仕事を共にするのも女性が多く、ついでに言えば、家族は私以外女性です、まあ最後は余談ですが。女性の社会進出は著しいものがある、と自分なりに喜ばしく解釈しておりました。
ところが、です。どうやら物事はそれほど単純ではないようでして。メディア系労働組合でつくられた日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が、今年3月に発表したところによりますと、新聞社(38社)の女性の管理職は7.71%で、役員にいたっては3.13%だそうです。また、在京の民間放送6社においても同様の傾向がみられ、女性の局長は8.3%で、うち3社は女性役員ゼロという結果が出ました。この数字は民間企業全体と比較しても低いものです。男性である私自身が、「(一般的に)女性の方が優秀」と感じており、その思いはあながち的外れでもなさそうなのに、マスコミの世界を担う上層部の男女比率には、いまだほぼ反映されていないということになります。
これから何年か時が過ぎれば、こうした格差は少しづづ解消されるかもしれません。けれどメディアの仕事に携わる人間は、他の業種に比べて、バランス感覚に長けた頭を持っていることが必須なはずです。おっさんたちにバランス感覚がないとまでは申しませんし、そう言うことで、自分にはね返ってくることを覚悟しなければならないのですが、それにしても早急になんとかしないといけない案件であることは、間違いのないところです。単に数字合わせに走ることの決してないように、という一言は付け加えるまでもありませんね。
ひとつひとつのニュースの視点や、番組の組み立て方は、これまでのところ「男社会」の価値観で切り取られてきたのかもしれません。新聞も放送も、もちろんその他のメディアの世界も、現場では優秀な女性たちが大いに活躍しているのです。彼女たちを大きく失望させることが決してないよう、おっさんたちには、心して「業界の体質改善」に本腰を入れて臨んで欲しいと願っています。
執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
日々、大学で講義していても、『打てば響く』と申しますか、『明るい』と言うのでしょうか、なにせ講義のやりがいを感じることが少なくありません。もちろん、男子学生がどうこうとディスるつもりは全くありません。究極は「個人」であることも良く理解していますが、一般的に申し上げて日々接する女子学生に比べ、街を歩く若い男性たちが、どことなく大人しく映るのは、あながち気のせいでもないようなのです。
仕事柄、メディアでこうしたコラムを書いたり、コメントしたりすることが結構あります。担当に付いてくださる方の男女比率が、ここ数年で男女逆転したのではないか、と感じるほど、女性と仕事を共にすることが増えました。やはり優秀な方が目立ちます。勤務する大学は前述のとおり女子大ですし、メディアで仕事を共にするのも女性が多く、ついでに言えば、家族は私以外女性です、まあ最後は余談ですが。女性の社会進出は著しいものがある、と自分なりに喜ばしく解釈しておりました。
ところが、です。どうやら物事はそれほど単純ではないようでして。メディア系労働組合でつくられた日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が、今年3月に発表したところによりますと、新聞社(38社)の女性の管理職は7.71%で、役員にいたっては3.13%だそうです。また、在京の民間放送6社においても同様の傾向がみられ、女性の局長は8.3%で、うち3社は女性役員ゼロという結果が出ました。この数字は民間企業全体と比較しても低いものです。男性である私自身が、「(一般的に)女性の方が優秀」と感じており、その思いはあながち的外れでもなさそうなのに、マスコミの世界を担う上層部の男女比率には、いまだほぼ反映されていないということになります。
これから何年か時が過ぎれば、こうした格差は少しづづ解消されるかもしれません。けれどメディアの仕事に携わる人間は、他の業種に比べて、バランス感覚に長けた頭を持っていることが必須なはずです。おっさんたちにバランス感覚がないとまでは申しませんし、そう言うことで、自分にはね返ってくることを覚悟しなければならないのですが、それにしても早急になんとかしないといけない案件であることは、間違いのないところです。単に数字合わせに走ることの決してないように、という一言は付け加えるまでもありませんね。
ひとつひとつのニュースの視点や、番組の組み立て方は、これまでのところ「男社会」の価値観で切り取られてきたのかもしれません。新聞も放送も、もちろんその他のメディアの世界も、現場では優秀な女性たちが大いに活躍しているのです。彼女たちを大きく失望させることが決してないよう、おっさんたちには、心して「業界の体質改善」に本腰を入れて臨んで欲しいと願っています。
執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
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