「アイドル」「芸人」「子役」は人材の宝庫!?経歴を生かし“華麗な変身”をする人たち 

2023.05.17

元・櫻坂46メンバーの原田葵さん(22)がアナウンサー職でフジテレビに入社している。日本テレビの市來玲奈アナ(18年入社)、テレビ朝日の斎藤ちはるアナ(19年入社)も、“坂道”系のアイドルグループに在籍していた。AKBグループからも地方局やフリーのアナウンサーが何名か出ている。もはや、アイドルはアナウンサーの予備軍なのか。

それだけじゃない。アイドルから政治家になったり、国内最難関と言われる東京芸術大学に進学したり、実際に絵画アーティストになって個展をしていたり、起業して大成功、はたまた気象予報士、歯科医師……アイドルは人材の宝庫だ。

こうなった背景には、アイドルが“グループ売り”になったことで、アイドル当時はそれほど注目を集めなかった人でも、そのキャリアを武器にそれぞれの分野に旅立ち、身につけたものを十分に発揮しているからだと言える。

アイドルは中年になっても続けられる仕事になった一方で、キャリアとして“転身の切符”にもなっているのだ。

「芸人」で培ったバイタリティで華麗な転身も

元・お笑い芸人の夢屋まさるさん(26)は慶応大学在学中に「パンケーキ食べたい!」のフレーズで2019年にブレイク。その後、芸人を引退して、今はテレビ朝日で制作業務をしている。ちなみに、ツイッターは現在も「夢屋まさる」名義で担当する番組の宣伝や近況などをつぶやいている。

芸人というのもまた、“キャリア”として有効なのだろう。芸人を辞めて商売で大儲け、経営者で成功、はたまた脚本家、映画監督、漫画家……etc 枚挙にいとまがない。

お笑いコンビ・野性爆弾に完敗したことで芸人を辞めることを決意し、サラリーマンを経験後、起業した人がいる。年商100億円のスプリーブホールディングスというベンチャー企業のCEO森武司さん(43)だ。元吉本のお笑いコンビ・ギゼンシンシだった森さんは、その経歴からあちこちのメディアでもよく取り上げられている。その中で「ゼロから新しいものを作り上げるのは難しい。それでも、80を100に変えるだけで、物事はもっとおもしろくできる。芸人時代から持つこの考え方は、今でも行動力の原点です」と語っている。

これほど大成功するのはもはや森さんのズバ抜けた能力だと思うが、芸人のキャリアを有効に生かした例だとは言えるだろう。芸人というのはとにかく柔軟な発想に長けている。そして、“やまっけ”もある。

今や、お笑い芸人もアイドルも養成スクールでレッスンを受けて目指す職業だ。筆者は過去に、芸人養成所の生徒たちに講義をしたり、彼らのネタを見てアドバイスを送ったりと講師の仕事をやったことがある。そういった学校で学ぶことは、たとえ芸人にならなくても、若者がこれから社会人になっていくうえで十分に役立つ内容だったと記憶している。

生徒たちは新ネタをつくり、客前にかけて、さらに改良を重ねていく。これはビジネスで大事な「トライ&エラー」そのものだ。そもそも単純に、人前でしゃべって相手に伝える、この訓練をするだけでも貴重な体験だと思う。義務教育や高校では教わらない社会勉強になっているに違いない。

アイドルの養成スクールについて筆者は詳しくはないが、そこでも自分の見せ方、表現力、目上の人たちとの接し方など、大事なことを自然に身につけていくのではないか。

芸人やアイドルから豊富な人材が生み出されるのは、こういった訓練や学びが人生のアドバンテージになっているからだろう。

「子役出身」も強みに。そしてエンタメ界は…

この春、芦田愛菜さん(18)、鈴木福くん(18)、本田望結さん(18)が有名私大へ進学する旨の報道があった。いずれも子役出身の俳優だ。

芸能活動のかたわらで進学をパスするのだから大したものだと思うが、一方でネットでは「自己推薦やAO入試での合格ってどうなの?」といった声も聞かれる。が、それは今の受験のありようを理解すれば、とくに疑問視する必要もないように思う。今や半数が推薦の時代。昔みたいな学力テスト一発ではなくなった。大学側が社会の変化にあわせて、どんな学生を受け入れるかを変えていて、そこに子役出身の俳優たちが見事にクリアしているというわけだ。

これで彼らは新たな可能性を手に入れたことになる。コメンテーターの仕事、報道関係の仕事、ブランディングされた大学イメージからCM出演、俳優としても役柄が幅広くなる……というか、若いし才能豊かなんだから、なんだってなれる(笑)!

あら、なんだか、欲しいものを手に入れる人はどんどん手に入れていて、そうじゃない人はどんどん奪われて、この世は格差社会。だと感じてしまった。

こうなると人は、高みにいる者が落ちていくのを見たくなる。結果、ネットでは強烈な“メシウマ”を待望するように。メシウマとは説明不要かもしれないが、「他人の不幸でご飯がおいしい」というネットスラングだ。そういった、他人が不幸や失敗に見舞われた時に生じる、抑えきれない喜びの感情を心理学的には「シャーデンフロイデ」と言うらしいけど、そんな感情が芽生えるのも仕方ないと感じる。

というわけで、芸能界でスポットを浴びる人たちはそこから引きずり降ろされないように好感度を意識した“いい人”ばかりになった。あれ? 多様性とか言っている時代に、タレントは画一的になっている。

この流れはますます拍車がかかると思うが、もちろん、タレントたちも窮屈なので、どうやったら風穴をあけられるか考えている人はいる。風穴をあけようとして炎上したり、嫌われたりする人がほとんどだけど、ある日突然誰かが「あれ? あんた、カッコよくね?」と人気者になったりするからエンタメ界は面白い。大衆はそんなスターを待ってるのだ!

【文:鈴木 しげき】

執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。
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