逮捕されたら一斉に悪人扱い!『Winny事件』でのマスコミは理不尽だった?
2023.03.01
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2月26日放送の「そこまで言って委員会NP」は「理不尽なニュース」がテーマ。特別ゲストの俳優・小沢真珠が演じる謎のセレブ・凛夫人が嘆くVTRを挟みながら数々の理不尽を議論した。中でも旬な話題が『Winny(ウィニー)事件』だ。
3月10日から公開される映画『Winny』は、実在の事件をもとに作られた作品。2002年に登場した『Winny』は、ユーザー同士でファイルを共有できる画期的な無料ソフトだった。しかし、映画や音楽などの著作物を簡単にアップロードできたことで、著作権侵害の温床にもなってしまった。2004年、『Winny』開発者の金子勇氏が著作権法違反幇助の容疑で逮捕。ネットに溢れる違法アップロードをマスコミは問題視し、当時は、金子氏を一方的に悪人扱いする報道もあった。だが、「殺人に使われた包丁を作った職人を罪に問えるのか?」という問いも浮上。世論も賛否に分かれ、裁判の行方に注目が集まった。
結果、金子氏は一審で有罪とされたが、二審で逆転無罪を勝ち取り、2011年には最高裁で無罪が確定したのだった。その2年後、金子氏は急性心筋梗塞でこの世を去った。この『Winny事件』についてのメディアの報道は、理不尽ではなかったのかを論客たちに問うた。
論客たちは全員が「理不尽」と回答。
本村健太郎氏(弁護士)は捜査の理不尽さを訴えた。
「金子氏は取り調べで、京都府警に『一筆書いてくれ』と言われ、警察の要求通りに“自分が開発したソフトを使って、皆さんが著作権侵害の違法行為をすることはわかっていました”という内容の文章を書かされてしまった。これが日本の刑事司法の問題のひとつで、警察にとって都合のいい調書を作られてしまう。本人から聞いた話を警察官が 作文し『この通りでよかったらサインしてくれ』と言う。その内容が間違っていたらその場ではっきり否定しないと、自分がやった証拠になってしまう。」
これに対し、かつて神奈川県警の刑事だった小川泰平氏(犯罪ジャーナリスト)が反論。
「調書の確認は録音録画しているので、今の時代、言ってもないことを勝手に調書に書いて読んでいたら、誰でも取り調べがおかしいと思う。」
本村氏は引かない。
「昔に比べると取り調べの可視化は確かに進んで、マシになった。ただ、今でも同じような違法まがいの捜査は行われている。」
小川氏がさらに突っ込む。
「いや行われてない。具体的な例があるのか?」
本村氏は言い続ける。
「今も取調室では『Winny事件』と同じようなことは実際に行われている。」
小川氏も態度を変えない。
「当時はね。今は行われてない。」
行われている、行われていない、の水かけ論になってきた。
流れを変えるべく、番組議長・黒木千晶アナが田嶋陽子氏(元参議院議員)に振る。
「無知の勘違いの罪は重い。私はこの事件を知らなくて、どうしてこんなことが事件になって、どうしてこの人はこんな早く死ななきゃいけなかったのか、と改めて思った。日本には先を見る力がないと感じた。」
須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)は「マスコミが、権力の飼い犬に成り下がってしまった。」と辛辣な回答。
「よく言われるように、メディアは、権力監視をしなければならない。この時はどうだったのか。『Winny事件』の本質を全く理解しないで、単純に警察・検察が描いたストーリーをそのまま垂れ流した。しかも、映画の中にあった、金子氏が保釈された時にマスコミが車を囲み、吊るし上げるようなシーンは、あれこそメディアスクラムだ。マスコミの一番醜いところが出てしまった。メディアは間違いなく理不尽。」
それを聞いた古舘伊知郎氏(フリーランスアナウンサー)が「慚愧の念に耐えない」と反省する。
「報道ステーションでキャスターだと偉そうに自任しながら、『著作権をぶっ壊しにかかってるのか』とか、公式発表された情報をそのまま思い込んでいた。もう今更、亡くなられて、申し訳ないと言っても話にならないが、 すごく後悔する。新しい技術はちゃんと守りながら、悪いことをやる人間をちゃんと取り締まる。そこを分別できなかったのが大問題だった。」
丸田佳奈(産婦人科医・タレント)が助け舟を出す。
「(金子氏を無罪に導いた)弁護士の壇俊光先生が書いた本の中に古舘氏の名前が出てくる。報道ステーションも彼に不利に報道するかと怖かったけれども、 古舘氏は『難しいですね』と番組内で流してくれてホッとした、と。」
古舘氏もホッとした様子で「ちょっと反省を撤回していいか。」と言い出す。
最後に本村氏が重く大切なことを語った。
「マスコミの責任は本当に重いと思う。逮捕されたら、一斉に報道されて、『あの人、悪いことをしていたんだ』という目で見てしまいがちだが、“無罪推定の原則”をもう1回改めて皆さん考えていただきたい。 有罪判決が確定するまでは、無罪と推定されなければならない。何も決まってない段階で犯人扱いされると、その人は人生を棒に振ってしまう。」
私たちは毎日誰かの逮捕シーンをニュースで見て、”悪いやつだ”と決めてかかっている。だが逮捕の時点では、有罪と確定したわけではない。情報を正確に伝えねばならないマスコミの責任は重いが、テレビを見る側の私たちにも責任があり、報道を鵜呑みにしないよう、気をつけるべきだろう。無実の人の人生を変えてしまってはならない。
一方、同じ「そこまで言って委員会NP」では、「ルフィ」とされる人物が指示したとされる連続強盗事件を扱い、フィリピンから送還されたり、国内各所で逮捕された人物を、映像や実名とともに紹介した。その際、「無罪推定」を理由に異論を挟む論客はおらず、もっぱらこの「犯罪」の恐ろしさや黒幕とされる人物への議論が行われた。
逆転無罪判決が確定した後に当時の報道を批判するのは容易いが、現在進行形の事件報道を一歩引いた目線で見ることもまた、必要なことではないだろうか。
3月10日から公開される映画『Winny』は、実在の事件をもとに作られた作品。2002年に登場した『Winny』は、ユーザー同士でファイルを共有できる画期的な無料ソフトだった。しかし、映画や音楽などの著作物を簡単にアップロードできたことで、著作権侵害の温床にもなってしまった。2004年、『Winny』開発者の金子勇氏が著作権法違反幇助の容疑で逮捕。ネットに溢れる違法アップロードをマスコミは問題視し、当時は、金子氏を一方的に悪人扱いする報道もあった。だが、「殺人に使われた包丁を作った職人を罪に問えるのか?」という問いも浮上。世論も賛否に分かれ、裁判の行方に注目が集まった。
結果、金子氏は一審で有罪とされたが、二審で逆転無罪を勝ち取り、2011年には最高裁で無罪が確定したのだった。その2年後、金子氏は急性心筋梗塞でこの世を去った。この『Winny事件』についてのメディアの報道は、理不尽ではなかったのかを論客たちに問うた。
論客たちは全員が「理不尽」と回答。
本村健太郎氏(弁護士)は捜査の理不尽さを訴えた。
「金子氏は取り調べで、京都府警に『一筆書いてくれ』と言われ、警察の要求通りに“自分が開発したソフトを使って、皆さんが著作権侵害の違法行為をすることはわかっていました”という内容の文章を書かされてしまった。これが日本の刑事司法の問題のひとつで、警察にとって都合のいい調書を作られてしまう。本人から聞いた話を警察官が 作文し『この通りでよかったらサインしてくれ』と言う。その内容が間違っていたらその場ではっきり否定しないと、自分がやった証拠になってしまう。」
これに対し、かつて神奈川県警の刑事だった小川泰平氏(犯罪ジャーナリスト)が反論。
「調書の確認は録音録画しているので、今の時代、言ってもないことを勝手に調書に書いて読んでいたら、誰でも取り調べがおかしいと思う。」
本村氏は引かない。
「昔に比べると取り調べの可視化は確かに進んで、マシになった。ただ、今でも同じような違法まがいの捜査は行われている。」
小川氏がさらに突っ込む。
「いや行われてない。具体的な例があるのか?」
本村氏は言い続ける。
「今も取調室では『Winny事件』と同じようなことは実際に行われている。」
小川氏も態度を変えない。
「当時はね。今は行われてない。」
行われている、行われていない、の水かけ論になってきた。
流れを変えるべく、番組議長・黒木千晶アナが田嶋陽子氏(元参議院議員)に振る。
「無知の勘違いの罪は重い。私はこの事件を知らなくて、どうしてこんなことが事件になって、どうしてこの人はこんな早く死ななきゃいけなかったのか、と改めて思った。日本には先を見る力がないと感じた。」
須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)は「マスコミが、権力の飼い犬に成り下がってしまった。」と辛辣な回答。
「よく言われるように、メディアは、権力監視をしなければならない。この時はどうだったのか。『Winny事件』の本質を全く理解しないで、単純に警察・検察が描いたストーリーをそのまま垂れ流した。しかも、映画の中にあった、金子氏が保釈された時にマスコミが車を囲み、吊るし上げるようなシーンは、あれこそメディアスクラムだ。マスコミの一番醜いところが出てしまった。メディアは間違いなく理不尽。」
それを聞いた古舘伊知郎氏(フリーランスアナウンサー)が「慚愧の念に耐えない」と反省する。
「報道ステーションでキャスターだと偉そうに自任しながら、『著作権をぶっ壊しにかかってるのか』とか、公式発表された情報をそのまま思い込んでいた。もう今更、亡くなられて、申し訳ないと言っても話にならないが、 すごく後悔する。新しい技術はちゃんと守りながら、悪いことをやる人間をちゃんと取り締まる。そこを分別できなかったのが大問題だった。」
丸田佳奈(産婦人科医・タレント)が助け舟を出す。
「(金子氏を無罪に導いた)弁護士の壇俊光先生が書いた本の中に古舘氏の名前が出てくる。報道ステーションも彼に不利に報道するかと怖かったけれども、 古舘氏は『難しいですね』と番組内で流してくれてホッとした、と。」
古舘氏もホッとした様子で「ちょっと反省を撤回していいか。」と言い出す。
最後に本村氏が重く大切なことを語った。
「マスコミの責任は本当に重いと思う。逮捕されたら、一斉に報道されて、『あの人、悪いことをしていたんだ』という目で見てしまいがちだが、“無罪推定の原則”をもう1回改めて皆さん考えていただきたい。 有罪判決が確定するまでは、無罪と推定されなければならない。何も決まってない段階で犯人扱いされると、その人は人生を棒に振ってしまう。」
私たちは毎日誰かの逮捕シーンをニュースで見て、”悪いやつだ”と決めてかかっている。だが逮捕の時点では、有罪と確定したわけではない。情報を正確に伝えねばならないマスコミの責任は重いが、テレビを見る側の私たちにも責任があり、報道を鵜呑みにしないよう、気をつけるべきだろう。無実の人の人生を変えてしまってはならない。
一方、同じ「そこまで言って委員会NP」では、「ルフィ」とされる人物が指示したとされる連続強盗事件を扱い、フィリピンから送還されたり、国内各所で逮捕された人物を、映像や実名とともに紹介した。その際、「無罪推定」を理由に異論を挟む論客はおらず、もっぱらこの「犯罪」の恐ろしさや黒幕とされる人物への議論が行われた。
逆転無罪判決が確定した後に当時の報道を批判するのは容易いが、現在進行形の事件報道を一歩引いた目線で見ることもまた、必要なことではないだろうか。
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