【テレビ×ソーシャルメディア対談】ショート動画がテレビを拡張させる未来!LINEヤフー浅野裕介さん(後編)

2024.07.19

【テレビ×ソーシャルメディア対談】ショート動画がテレビを拡張させる未来!LINEヤフー浅野裕介さん(後編)
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今や、すっかり定着したショート動画が、テレビの可能性をさらに広げるのでは――と期待されている。そこで、ショート動画が楽しめる動画プラットフォーム「LINE VOOM」を統括する株式会社LINEヤフーの浅野裕介さんを迎えてメディア対談をお届けする。

インタビュアーは、『ダウンタウンDX』を20年以上演出してきた読売テレビの西田二郎。「西田二郎のメディアの旅」今回はソーシャルメディアが、テレビを中心としたエンタメ界をより面白く、豊かにしていく未来ついて語った。

【構成・鈴木しげき】

「LINE VOOM」が収益化したことでクリエイターが誕生

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▲LINEヤフーの浅野裕介さん(左)と西田二郎(右)
西田 : ショート動画が見られるプラットフォーム「LINE VOOM」、これは誰でも簡単に楽しめますね。

浅野 : LINEの公式アカウントと連携しているので自由に開設できて、すぐに投稿できちゃいます。

西田 : 一般の方もそうですけど、インフルエンサーさんはたくさん再生されれば、その分アドセンスにつがるみたいなシステムがYouTubeなどにはあったりするじゃないですか。そのあたりは?

浅野 : 今、「LINE VOOM Creator Program」という頭文字をとって「LVCP」というネーミングでスタートさせていまして、これに参加すると投稿した動画コンテンツの再生時間などに応じた報酬を受け取ることができます。

これまではクリエイターさんやインフルエンサーさんはどこかの事務所に所属していて、その事務所さんと我々LINEが提携してやりとりしていたのですが、「LVCP」ができたことで、収益化資格を満たした人ならどなたでも大丈夫になったわけです。

西田 : なるほど、LINEさんが認めてくれたらもうOKなんですね。

浅野 : はい。収益還元っていうのはロジックがいろいろ複雑なんですけども、基本、見てもらった回数に対して広告表示があるので、その分配という形で収益還元させていただきます。

西田 : 投稿者からすれば、待ちに待ったという感じでしょうね。どんどん入ってきてます?

浅野 : はい。元々、他で人気あるクリエイターがLINEに来て人気になることもありますし、他のプラットフォームでいまいち伸びなかったけど、LINEに来たら見てもらえるようになったとか、いろいろですね。

西田 : へぇー、それ夢ありますねー!

プラットフォームの特性を生かしてクリエイター育成も

浅野 : けど、ファンも一緒に移るってなかなかないんですよ。

西田 : そうかぁ! 明石家さんまさんは確かにYouTubeやりませんものね。さんまさんのことはテレビでみんな見てるわけやから、それをよそで見るかっていったらそこはわからないと。

浅野 : そうなんですよ。私、ライオンズファンなんですけど、「あの選手がトレードになりました」となって、じゃあ移籍先の巨人ファンになるかと言ったらそうでもないですよね。わざわざ、このプラットフォームからあのプラットフォームへ、というファンはなかなかいないのが現実かもしれません。

西田 : ということは、LINE VOOMが逆転可能なプラットフォームになってくるわけですね。そういうのって、やっぱりプラットフォームの特性みたいなものがあってそれが関係してるんでしょうね。そこ、知りたいんで教えてください。

浅野 : LINEのプラットフォームって全国で9600万人が見てるんですね。

西田 : 9600万人が見てるんですか!?

浅野 : 仮にさんまさんがTikTokerだとして、たくさんの人に見られていたとしても、LINEのユーザーさんって10代から高齢の方までいて、上の人たちからすると「TikTokって聞いたことあるし知ってるけど、実際にさんまさんの動画は見たことがない」っていう人がいるんですね。

西田 : なるほど。わざわざTikTokのアプリをダウンロードして、TikTokに入る怖さって確かにあります。そういう点でいうと、LINE VOOMは年齢層がもう少し幅広いと。

浅野 : コンテンツの消費傾向もちょっと違っていて、実用的なものとか、具体的にいうと、料理、DIY、便利アイテム……。無印良品、ニトリ、100円ショップのものなど、そういうものが見られるんですね。やっぱり3、40代の主婦層が多いので。

西田 : へぇ~。そういった層に合わせた投稿者が出てきてるんですね。

浅野 : さきほど言った「LVCP」は収益還元だけじゃなくて、うちの社員たちが交流会を作ったり、毎年クリエイターコンテストを開催して表彰したり、そういう育成サポートもやってますので新たな才能が出てきてます。それこそ、今ブームとなっているショートドラマの作り手とか。

西田 : そんな中、テレビとの関わりはどんなところだと感じてますか?

浅野 : TikTok上半期トレンド大賞2024の大賞キーワードが「ショートドラマ」なんですね。例えば、テレビからスタートして、YouTubeがバラエティーやってみたとかチャレンジしていろいろ派生してますよね。そんな中、ドラマってストーリー性があって、それを今度はタテ型のショートで見せるというのは、何か新しいものを感じさせてくれます。

それが、ここにきて一気にブームカルチャーになりつつあるというのは、ネットだけでなく、テレビにも新ジャンルというか、まだまだ新しいものを生み出せる可能性が見えてきたってことだと思いますね。

西田 : それ、ショートってところがポイントだと思うんですよ。だったら、ショートバラエティーというのもあるかもしれない。

浅野 : あるんじゃないですか。
▲LINEヤフーの浅野裕介さん(左)と西田二郎(右)

ショート動画×テレビで新ジャンルのエンタメが!

西田 : ちょっと不思議に感じてることがあって、ショートドラマって途中から途中に飛んだりして、わからなくなることがあるんですよ。主人公の女の人が怖い顔して「あなたね……」とか怒ってて、まぁ恋愛ごとで揉めてるんだろうなとはわかるんですけど、戻っても必ずしも連番ではなくて。

浅野 : いや、それは連番なんですけど、今の若い人たちは別に連番じゃなくてもいいんですよ。

西田 : えっ、パズルみたいになってても?

浅野 : バラバラでいいんです。僕もはっきり断言はできないですけど、「タイパ」というキーワードで、最初から1個ずつ見ていくのがもはやタイパの時代が合っていないという。

西田 : はしょってても、盛りあがってるところから見たら想像でだいたいこんなことやろって理解していくってことなんですか?

浅野 : 勝手に自分で補完しちゃうんですよね。で、それがあまりズレすぎてないというか。よく映画でもあるじゃないですか。最初からずっと我慢して見てたのに「あれ? これ、おもしろくない」みたいな(笑)。

西田 : ありますね。

浅野 : 若い人はそれがダメで、待てないみたいなんですね。それが損だって考え方なので。ネタバレでもいいから一番人気をレコメンドされて、それを自分がおもしろいかおもしろくないか。おもしろかったら、最初の「1」から見ようと。

西田 : なるほどね。そう考えたら、ショートドラマはよくできてるんですね。

浅野 : そうなんですよ。必ず毎話毎話にクリフハンガーという盛り上がりを入れて、次に気になる要素があって進むと。テレビドラマだと、それこそドローン飛ばして空撮して全体の画をつくったりしますが、タテ型だと顔だけのアップで「あ、怒ってるんだな」と伝わればいいし、背景もちょっと入れ込めば、だいたい伝わります。けど、そこにテレビマンさんが制作に加わるとか、一流のテレビ制作会社さんが本気でショートに参加するとなったら、これはいろいろ変わると思います。

西田 : エンタメとして、テレビにもネットにも刺激になりそうですね!

浅野 : 海外ではもうそうなってるんですよ。テレビ画面の16対9の中に、ものすごい凝った演出やテロップがあって、それをショートドラマに持ち込んだら、それはやっぱり違うなと。

西田 : こいつら、ちょっと違うなとなるわけですね。

浅野 : はい、そう思いました。北米や中国の高クオリティのショートドラマを見てたら、まだまだ日本のショートドラマのクオリティは全然違うんだなと。

西田 : となると、LINE VOOMでテレビの一流監督が手がけるなど今後はありそうですね。

浅野 : そうですね。

西田 : で、その人がテレビドラマをまたやる時は新しい要素を持ち込んできて、それがまたテレビの進化につながると。めちゃめちゃ可能性の広がりを感じますね。

浅野 : そこはコラボレーションでまた面白いものが生まれると思います。
▲LINEヤフーの浅野裕介さん(左)と西田二郎(右)
【浅野裕介 プロフィール】
LINEヤフー株式会社エンターテイメントカンパニー VOOM事業統括本部の部長。ショート動画などが楽しめる動画プラットフォーム「LINE VOOM」で、時代に合わせた新コンテンツのプロデュースやクリエイターの育成を手掛けている。また、テレビとのコラボレーションも多く、メディアの可能性を拡張させるサービスも。過去には株式会社USEN、株式会社GYAOに在籍。それらを経てLINEヤフー株式会社へ移籍。
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