テレビの「ディレクター」「演出」「総合演出」「監督」「総監督」って何がどう違うの?本人に聞いてみた

2018.01.23

テレビ番組の最後に流れるスタッフの名前の群れ――スタッフロールを見ていると、テレビにはじつに様々な仕事をしている人たちが関わっているのがわかる。しかしだ。よくわからないものも多い。「ディレクター」といえば、指をパチパチ鳴らして画を撮っている者だろう。それくらいはわかる。ところがスタッフロールを見ていると「ディレクター」の後に「演出」と出てくるではないか。それだけじゃない。番組によっては「総合演出」「監督」「総監督」なんてのもある。これら、何がどう違うのか? 本人に聞いてみた。


■まずは帯番組の「総合演出」に質問。総合演出って何する人なんですか?

「番組のクオリティーを管理するのが総合演出ね。例えば、ディズニーランドに行ったら満足を得られないとダメでしょ。それを保証するために、それぞれのアトラクションを見て、クオリティーを管理しているわけ。アトラクションはそれぞれ違ってるわけだから。それを作ってるのは演出とディレクターたちね。それぞれのアトラクションの魅力は“おもしろさ”“楽しさ”“ためになる”なんでもいい。それらを総合してテーマパークとしてクオリティーを支配してるってことね」

ほう、なんとなくはわかった。では「総合演出」と「演出」は何が違うんですか?

「一緒だよ」

えっ、一緒なの? ただ、最終的に責任を取るのは「総合演出」だという。責任の大きさが肩書きの違いということか。

■続いて、バラエティーの「演出」に聞いてみた。演出って何する人なんですか?

「演出というのは番組の“色”を決める人のこと。ディレクターはその色をかっこよく作る人ね。チーフD(ディレクター)ってのは『こういうのでしょ』と一番理解してる人かな。Dは兵隊みたいなものよ。ADも同じね」

■続いて、「ディレクター」に聞いた。ディレクターって何する人ですか?

「番組によって細かい役割の違いはあるかと思いますが、大まかに言うと、演出のイメージしたことをディレクターが具体的に形にするという関係性だと思います。かといって、ディレクターは演出に言われたことを単純にやるだけでなく、イメージを形にしていく中で自分なりに考えて判断していかないといけないので、例えるなら、サッカーの監督と選手みたいな感じかと思います」

すごくわかりやすい。なるほど。それにしても、答えてくれた人たちはみんな例え話が好きだな。
では、「監督」「総監督」とは何なのか。

■ドラマの現場で「監督」と呼ばれている人に聞いてみた。監督って何ですか?

「演出のことだよ。撮影の現場ではみんな『監督』って呼んでくれるけど、クレジット上では『演出』だからね。なんでそう呼ばれるかって? 映画界の名残じゃないの」

■アニメで「総監督」と呼ばれる人にも聞いてみた。総監督って何ですか?

「作品の最終的なジャッジをする人。監督と同じでシナリオ、絵コンテ、デザイン、アフレコと全部チェックやりますよ」


ん!? いろいろ聞いてみたが、どうやら、なんとなく全部同じように思えるのだが。そんな疑問を再びブツけてみた。すると、ある人からこんな答えが返ってきた。

「だいたいみんな同じだよ。俳優の船越英一郎さん、いるじゃない? あの人、バラエティーに出てもらったら、おれのこと『監督』って言うわけ。ドラマでもないのに。けど、あの人に言わせたら“演出する人”は監督なわけね。ジャンルや番組そのものの違いで肩書きの差はあるんだろうけど、だいたい同じだよ」

そうだったのか、せっかく全員に聞いたのに……。不満そうにしていると、その人はこう言った。

「番組にいっぱいスタッフがいることあるじゃん。大きい番組とか。そういうときに『総監督』とか『総合演出』とか使うわけよ。いっぱいいるから」

スタッフが多いから分けているということらしい。確かに昔のテレビのスタッフロールと比べたら、今の番組は膨大な名前が出てくる。当然それぞれ必要だからいるわけで、いかに番組が丁寧に細かく作られているかがそこから垣間見られるだろう。テレビはコンテンツとしてのクオリティーをそうやって確保しているのだ。

そんなふうに考えたらテレビを「ながら見」ではなく、ときどきはしっかり観てみようと思ったりして。新たな発見があるかも。
【文:鈴木 しげき】

執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。
この記事を共有する

新着記事

新着記事一覧へ

アクセスランキング