今年中に日本の給料は上がるか?・・・上がりそうにない悲しい結論!
2022.06.10
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止まらない円安が議論を呼んでいる。円安は日本経済にとってプラスかマイナスか?その影響は個人にどう出るのか?6月5日放送の「そこまで言って委員会NP」では「円安と経済危機」をテーマに激論が交わされた。盛り上がったのは「今年中に日本の給料が上がるか上がらないか」の議論。
委員会常連の森永卓郎氏の息子で今回初登場の森永康平氏(経済アナリスト)は「上がらない。一部の大企業のみ上がるかもしれないが」と回答。「上場企業はこんな状況下でも状況がいいところは多いが、結局、大企業だけ。そういう人たちは給料が上がるかもしれない。ただ、日本全体を見たときに従業員ベースで、7割ぐらいは中小零細企業の方たち。その人たちの給料が上がらないとみんなが上がった実感は得ることができない。円安のあおりを受けるのもまさに中小零細企業。」
朴一氏(経済学者)が付け加えて言う。「97年からつい最近まで大卒の初任給が20万円弱だった。そもそも大企業でさえも海外に比べて賃金が安すぎる。平均賃金は日本人全体で440万円。
韓国でさえ460万円になっているのにそれより低い。私は学生に対して職場をもう海外に求めなさいと言っている。例えばシンガポール大学のMBAをとると1年目で2400万円もらっている。黒木さんの給料いくらですか?2400万円でしょ?」
と番組議長・黒木千晶アナに聞くがもちろん「そんなにないない!」と全否定。
井上久男氏(経済ジャーナリスト)も「上がる、ただし大企業のみ」と回答。「サプライチェーンの上にいる大企業はみんな儲かっている。それをいかに配分していくかが問われると思う。例えば部品の購入価格を上げること。そうすることで下請けが儲かれば、配分に回る。」
須田慎一郎氏(ジャーナリスト)がそれに続けて言う。「この20年、30年見ると大企業が中小零細企業に発注している部品単価、手間賃工賃がずっと下がり続けている。価格競争のしわ寄せは全部中小企業に押し付けてきた。中小零細企業の経営は成り立たない。」
山口真由氏(元財務省官僚)が切り口を変える。「賃上げをすれば消費が喚起されアメリカみたいに個人消費に裏打ちされた強い景気が戻ってくると言われるが、バブル期でも資産価格に裏打ちされて家計消費が3%伸びていた。株高の方がいいのではないか。私たち庶民は現金を持っている。アメリカだったら個人資産の54%は株だ。株や資産を上げる方が簡単だ。その時に、景気良くなったと思って個人消費が伸び賃金が上がる、この循環でもいいのでは?」
須田氏がこれに反論。「だが圧倒的多数の人たちは金融資産なんか持っていない。」
言われた山口氏が矛先を変え「物価上昇率2%の日銀の目標は日本において正しかったのか?物価が2%上がった時代は、日本にほとんどないのでは。」と質問。
須田氏が「なぜ上がらなかったのか?供給過多で、需要があまりにも少なかった。需給のギャップで物価上昇が起きなかった。必要なのは需要を増やしていく、賃金を増やして消費を増やしていくこと。あるいは公的セクターが財政出動をするのもいい。需給ギャップを穴埋めしない限り日本経済は良くならない!」と力説。
これに石川和男氏が反応。「需要を増やすのは“超大型経済対策”。つまり「金を配れ」ということ。需要マインドを起こさせるためのGoToキャンペーンのような補助金的なものでインセンティブを与える措置を本来はやるべき。しかし日本の財政は、ケチで中途半端。」
ここで竹中平蔵氏(経済学者)がとうとうと語る。「内閣府が需給ギャップを計算すると、GDPの3.1%で約17兆円ある。これはやっぱり財政政策で埋めるべきだと思う。例えば林業に可能性があるなら林道を作って地方の林業を活発にしましょうとか、5 Gの共同アンテナを作ってデジタル田園都市にしますとか、賢い使い方をする。ところが石川氏がケチと言ったがその通り。去年も夏頃になって、予算の使い残しが数十兆円あるとわかった。今年も出てくる可能性がある。そこをちゃんと精査して、需給ギャップを埋める。もう一つは生産性を上げなきゃいけない。規制緩和を行って構造改革をやるんだと言って、20年ぐらいずっと議論をしてきたが、何も進んでないものがたくさんある。それをやらない限りは上がらない。だから今年は(日本の給料は)上がらないと思う。」
ここで黒木アナがこちらも初登場の馬渕磨理子氏(経済アナリスト)を指名。「岸田総理は“所得倍増”ではなく“資産所得倍増”と言っている。GDPが伸びない中で所得だけが倍増するのはありえない。『皆さん株を持ってそれでご自身で所得を増やしてください』というメッセージ。大企業は約400兆円の内部留保があるので、ここを使えば十分に賃上げは可能。」
竹中氏が突っ込む。「総裁選のときに岸田氏は“令和の所得倍増”と言ったが引っ込めた。岸田側近によると、そう言ったことをすごく気にして、官僚たちがうまく考えて“資産所得倍増”と出してきた。しかし所得倍増だと500兆円の経済が倍になるのだが、日本の家計の資産所得は13兆円に過ぎない。大変面白いなと思う。」
最後に須田氏が悲しい話を持ち出す。「中小零細企業の賃金の上昇があるものに連動することを最近、発見した。それは最低賃金だ。最低賃金を上げると中小零細企業は賃金が上がる。それぐらい中小零細企業の賃金は低い水準に置かれている。岸田総理もそこに想いを向けるべきだ。」
議論は錯綜したが、今年は大企業以外、給料が上がらないことは論客たちの一致した結論のようだ。物価が急速に上がる一方で、経済は活性化しない。やはり給料が上がって消費者がお金を使わないと、景気は良くならないのではないか?政治家や官僚の皆さんには、そこのところを本当にわかってもらいたいものだ。
【文:境治】
委員会常連の森永卓郎氏の息子で今回初登場の森永康平氏(経済アナリスト)は「上がらない。一部の大企業のみ上がるかもしれないが」と回答。「上場企業はこんな状況下でも状況がいいところは多いが、結局、大企業だけ。そういう人たちは給料が上がるかもしれない。ただ、日本全体を見たときに従業員ベースで、7割ぐらいは中小零細企業の方たち。その人たちの給料が上がらないとみんなが上がった実感は得ることができない。円安のあおりを受けるのもまさに中小零細企業。」
朴一氏(経済学者)が付け加えて言う。「97年からつい最近まで大卒の初任給が20万円弱だった。そもそも大企業でさえも海外に比べて賃金が安すぎる。平均賃金は日本人全体で440万円。
韓国でさえ460万円になっているのにそれより低い。私は学生に対して職場をもう海外に求めなさいと言っている。例えばシンガポール大学のMBAをとると1年目で2400万円もらっている。黒木さんの給料いくらですか?2400万円でしょ?」
と番組議長・黒木千晶アナに聞くがもちろん「そんなにないない!」と全否定。
井上久男氏(経済ジャーナリスト)も「上がる、ただし大企業のみ」と回答。「サプライチェーンの上にいる大企業はみんな儲かっている。それをいかに配分していくかが問われると思う。例えば部品の購入価格を上げること。そうすることで下請けが儲かれば、配分に回る。」
須田慎一郎氏(ジャーナリスト)がそれに続けて言う。「この20年、30年見ると大企業が中小零細企業に発注している部品単価、手間賃工賃がずっと下がり続けている。価格競争のしわ寄せは全部中小企業に押し付けてきた。中小零細企業の経営は成り立たない。」
山口真由氏(元財務省官僚)が切り口を変える。「賃上げをすれば消費が喚起されアメリカみたいに個人消費に裏打ちされた強い景気が戻ってくると言われるが、バブル期でも資産価格に裏打ちされて家計消費が3%伸びていた。株高の方がいいのではないか。私たち庶民は現金を持っている。アメリカだったら個人資産の54%は株だ。株や資産を上げる方が簡単だ。その時に、景気良くなったと思って個人消費が伸び賃金が上がる、この循環でもいいのでは?」
須田氏がこれに反論。「だが圧倒的多数の人たちは金融資産なんか持っていない。」
言われた山口氏が矛先を変え「物価上昇率2%の日銀の目標は日本において正しかったのか?物価が2%上がった時代は、日本にほとんどないのでは。」と質問。
須田氏が「なぜ上がらなかったのか?供給過多で、需要があまりにも少なかった。需給のギャップで物価上昇が起きなかった。必要なのは需要を増やしていく、賃金を増やして消費を増やしていくこと。あるいは公的セクターが財政出動をするのもいい。需給ギャップを穴埋めしない限り日本経済は良くならない!」と力説。
これに石川和男氏が反応。「需要を増やすのは“超大型経済対策”。つまり「金を配れ」ということ。需要マインドを起こさせるためのGoToキャンペーンのような補助金的なものでインセンティブを与える措置を本来はやるべき。しかし日本の財政は、ケチで中途半端。」
ここで竹中平蔵氏(経済学者)がとうとうと語る。「内閣府が需給ギャップを計算すると、GDPの3.1%で約17兆円ある。これはやっぱり財政政策で埋めるべきだと思う。例えば林業に可能性があるなら林道を作って地方の林業を活発にしましょうとか、5 Gの共同アンテナを作ってデジタル田園都市にしますとか、賢い使い方をする。ところが石川氏がケチと言ったがその通り。去年も夏頃になって、予算の使い残しが数十兆円あるとわかった。今年も出てくる可能性がある。そこをちゃんと精査して、需給ギャップを埋める。もう一つは生産性を上げなきゃいけない。規制緩和を行って構造改革をやるんだと言って、20年ぐらいずっと議論をしてきたが、何も進んでないものがたくさんある。それをやらない限りは上がらない。だから今年は(日本の給料は)上がらないと思う。」
ここで黒木アナがこちらも初登場の馬渕磨理子氏(経済アナリスト)を指名。「岸田総理は“所得倍増”ではなく“資産所得倍増”と言っている。GDPが伸びない中で所得だけが倍増するのはありえない。『皆さん株を持ってそれでご自身で所得を増やしてください』というメッセージ。大企業は約400兆円の内部留保があるので、ここを使えば十分に賃上げは可能。」
竹中氏が突っ込む。「総裁選のときに岸田氏は“令和の所得倍増”と言ったが引っ込めた。岸田側近によると、そう言ったことをすごく気にして、官僚たちがうまく考えて“資産所得倍増”と出してきた。しかし所得倍増だと500兆円の経済が倍になるのだが、日本の家計の資産所得は13兆円に過ぎない。大変面白いなと思う。」
最後に須田氏が悲しい話を持ち出す。「中小零細企業の賃金の上昇があるものに連動することを最近、発見した。それは最低賃金だ。最低賃金を上げると中小零細企業は賃金が上がる。それぐらい中小零細企業の賃金は低い水準に置かれている。岸田総理もそこに想いを向けるべきだ。」
議論は錯綜したが、今年は大企業以外、給料が上がらないことは論客たちの一致した結論のようだ。物価が急速に上がる一方で、経済は活性化しない。やはり給料が上がって消費者がお金を使わないと、景気は良くならないのではないか?政治家や官僚の皆さんには、そこのところを本当にわかってもらいたいものだ。
【文:境治】
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