やめる気がないプーチン。やめられないゼレンスキー。ロシア・ウクライナ戦争は今年中に決着するか?
2022.08.17
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ロシアによるウクライナ侵攻が続く一方、台湾をめぐり米中に緊張が走った今月。“戦争”が現在の問題として私たちに迫っている。終戦の日を前にした8月14日の『そこまで言って委員会NP』では「77年目の夏・・・戦争について考える」と題して、いくつかの切り口で“戦争”をテーマに議論した。
ゲストに迎えたのは報道カメラマン、宮嶋茂樹氏。ロシアによる侵攻を受けたウクライナに赴き、生々しい戦地の様子を撮影した。宮嶋氏の参加で、戦争についてリアルに議論が展開。最初のテーマは、「ロシア・ウクライナ戦争は今年中に決着するか、決着しないか」だったが、ほとんどのパネリストが「決着しない」と回答した。
宮嶋氏も「プーチンが死ぬまで決着しない」と回答。
そんな宮嶋氏は、現地で危険を感じなかったのだろうか。「鉛の玉が近くを通ることはなく、砲弾が頭上を飛び交う程度」とのことだ。この言い方が逆に戦地の恐ろしさを感じさせる。
ただ市民は、意外に通常の生活を営んでいるようだ。
「現地に行く前に食料を買い溜めしておいたが、意外にも現地は食料自給率が高く、空爆現場の近くのスーパーも開いていた。通信も、イーロン・マスクのおかげもあり(マスク氏は人工衛星システムを使った高速ネットサービスをウクライナ全土に無償提供)インターネットがどこに行っても通じた。」
番組議長・黒木千晶アナがさらに聞く。
「食料自給率の高さも、ウクライナが持ちこたえられている要因なのか?」
宮嶋氏は「第2次大戦の時の日本のような食糧事情になると国民の中に厭戦気分が漂うだろうが、ウクライナは食料自給率100%。士気の高さにも繋がると思う。」と推測する。
朴一氏(大阪公立大学名誉教授)はウクライナ国民を讃える宮嶋氏に“違和感”を覚えると指摘した。
「犠牲者がどんどん増えている。今ウクライナが持ちこたえているのは、西側諸国の武器供与によるところが大きい。エマニュエル・トッド(フランスの歴史人口統計学者)も西側諸国の武器供与がこの戦争を長期化させ、下手をしたら第三次世界大戦に発展させる可能性もあると述べている。ゼレンスキー大統領は国民の命よりもクリミア奪還に重きを置くのか?もしくは妥協して国民の命を守るという選択肢はないのか?」
ロシアに対して領土の割譲を認めず戦争が長期化するとウクライナ国民がどんどん犠牲になるだけではないか、との意見だ。
RaMu氏(モデル・タレント)はただ一人、今年中に決着すると回答。
「ロシアは経済制裁をかなり受けている。国際送金ネットワークからの締め出し、各国の中央銀行の資産凍結、要人の海外不動産の差し押さえ。さらに貿易制限も受けている。4か月後には底を尽くのではないか。」
すると井上和彦氏(軍事ジャーナリスト)が横から解説する。
「実は、ロシアは財政黒字。」これに「えー!」と驚くRaMu氏に井上氏が説明を続ける。
「2021年の同じ期の半年間と比べた時に、何倍もの黒字になっている。エネルギー価格の高騰と、ロシアが他国から輸入をできなくなったことによって、ロシアから持ち出される外貨そのものがなくなり黒字になった。」
須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)が付け加えて言う。
「日本だって、ロシアから天然ガスを買っている。色々な国がロシアからエネルギーを買い、代金を支払っているから、ロシアはいくらでも戦費を調達できる。ウクライナを支援する一方でロシアからエネルギーを買う我々は矛盾している。」
丸田佳奈氏(医師)も加わる。「結局欧米もロシアからエネルギーが入ってこないとなると、自国民がきつくなってきた。停戦してほしいという国が増えてきたり、ロシア寄りになる国も出てきた。ロシアに対してどういう態度をとるべきか、揺らいできたのが心配。」
竹田恒泰氏(作家)はまた独自の論を述べる。「戦争が始まってから、アメリカもヨーロッパも経済がいい。なんとかして戦争を止めなきゃ…という気合が感じられない。この戦いはアメリカがウクライナに圧倒的な火力を与えれば瞬時で終わる。やめさせる気がないので、ちょろちょろしか渡してない。」
須田氏がこの意見に同調。
「今アメリカがウクライナに提供している武器はミサイルだが、せいぜい射程は60キロ。ウクライナは300キロ射程の戦術ミサイルを提供してくれと求めているが、アメリカは提供しない。ウクライナがロシア国内を攻撃し始めると泥沼化して第三次世界大戦になるかもしれないからだ。アメリカは非常に曖昧な状況にある。」
黙って聞いていた宮家邦彦氏(元外交官・立命館大学客員教授)が発言。
「この戦争は 2月24日に始まったのではなく2014年(のクリミア併合)に始まっている。ロシアが正規軍を使ったのは、つい最近かもしれないが、戦争自体はずっと続いており、終わるわけがない。ロシアは消耗戦を平気でやる。最後は小さなウクライナが音を上げると思っているからロシアはやめる気はまったくない。また、ゼレンスキー氏もやめられるわけがない。戦争は、戦場で決まる。交渉では決まらない。両方とも『このままじゃ負けそうだ』と思わない限り、停戦なんかできない。停戦協定なんて破られるためにある。何回も何回も停戦協定は破られ、それでようやく休戦になるものだ。」
ここで宮嶋氏が戦場で実際に身につけていた防弾チョッキがスタジオで披露された。なんと重さは15kgもある。番組秘書・野村明大アナが身につけてみるのだが、着るにも一苦労で動き回るだけで大変そうだ。
防弾チョッキでさえ私たちは触れたことがない。しかし、今年は“戦争”が他人事ではなくなった。日本や世界の平和を守るためにも、私たちが戦争とは何か、平和とは何かを真剣に考える必要があると感じた議論だった。
【文:境治】
ゲストに迎えたのは報道カメラマン、宮嶋茂樹氏。ロシアによる侵攻を受けたウクライナに赴き、生々しい戦地の様子を撮影した。宮嶋氏の参加で、戦争についてリアルに議論が展開。最初のテーマは、「ロシア・ウクライナ戦争は今年中に決着するか、決着しないか」だったが、ほとんどのパネリストが「決着しない」と回答した。
宮嶋氏も「プーチンが死ぬまで決着しない」と回答。
そんな宮嶋氏は、現地で危険を感じなかったのだろうか。「鉛の玉が近くを通ることはなく、砲弾が頭上を飛び交う程度」とのことだ。この言い方が逆に戦地の恐ろしさを感じさせる。
ただ市民は、意外に通常の生活を営んでいるようだ。
「現地に行く前に食料を買い溜めしておいたが、意外にも現地は食料自給率が高く、空爆現場の近くのスーパーも開いていた。通信も、イーロン・マスクのおかげもあり(マスク氏は人工衛星システムを使った高速ネットサービスをウクライナ全土に無償提供)インターネットがどこに行っても通じた。」
番組議長・黒木千晶アナがさらに聞く。
「食料自給率の高さも、ウクライナが持ちこたえられている要因なのか?」
宮嶋氏は「第2次大戦の時の日本のような食糧事情になると国民の中に厭戦気分が漂うだろうが、ウクライナは食料自給率100%。士気の高さにも繋がると思う。」と推測する。
朴一氏(大阪公立大学名誉教授)はウクライナ国民を讃える宮嶋氏に“違和感”を覚えると指摘した。
「犠牲者がどんどん増えている。今ウクライナが持ちこたえているのは、西側諸国の武器供与によるところが大きい。エマニュエル・トッド(フランスの歴史人口統計学者)も西側諸国の武器供与がこの戦争を長期化させ、下手をしたら第三次世界大戦に発展させる可能性もあると述べている。ゼレンスキー大統領は国民の命よりもクリミア奪還に重きを置くのか?もしくは妥協して国民の命を守るという選択肢はないのか?」
ロシアに対して領土の割譲を認めず戦争が長期化するとウクライナ国民がどんどん犠牲になるだけではないか、との意見だ。
RaMu氏(モデル・タレント)はただ一人、今年中に決着すると回答。
「ロシアは経済制裁をかなり受けている。国際送金ネットワークからの締め出し、各国の中央銀行の資産凍結、要人の海外不動産の差し押さえ。さらに貿易制限も受けている。4か月後には底を尽くのではないか。」
すると井上和彦氏(軍事ジャーナリスト)が横から解説する。
「実は、ロシアは財政黒字。」これに「えー!」と驚くRaMu氏に井上氏が説明を続ける。
「2021年の同じ期の半年間と比べた時に、何倍もの黒字になっている。エネルギー価格の高騰と、ロシアが他国から輸入をできなくなったことによって、ロシアから持ち出される外貨そのものがなくなり黒字になった。」
須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)が付け加えて言う。
「日本だって、ロシアから天然ガスを買っている。色々な国がロシアからエネルギーを買い、代金を支払っているから、ロシアはいくらでも戦費を調達できる。ウクライナを支援する一方でロシアからエネルギーを買う我々は矛盾している。」
丸田佳奈氏(医師)も加わる。「結局欧米もロシアからエネルギーが入ってこないとなると、自国民がきつくなってきた。停戦してほしいという国が増えてきたり、ロシア寄りになる国も出てきた。ロシアに対してどういう態度をとるべきか、揺らいできたのが心配。」
竹田恒泰氏(作家)はまた独自の論を述べる。「戦争が始まってから、アメリカもヨーロッパも経済がいい。なんとかして戦争を止めなきゃ…という気合が感じられない。この戦いはアメリカがウクライナに圧倒的な火力を与えれば瞬時で終わる。やめさせる気がないので、ちょろちょろしか渡してない。」
須田氏がこの意見に同調。
「今アメリカがウクライナに提供している武器はミサイルだが、せいぜい射程は60キロ。ウクライナは300キロ射程の戦術ミサイルを提供してくれと求めているが、アメリカは提供しない。ウクライナがロシア国内を攻撃し始めると泥沼化して第三次世界大戦になるかもしれないからだ。アメリカは非常に曖昧な状況にある。」
黙って聞いていた宮家邦彦氏(元外交官・立命館大学客員教授)が発言。
「この戦争は 2月24日に始まったのではなく2014年(のクリミア併合)に始まっている。ロシアが正規軍を使ったのは、つい最近かもしれないが、戦争自体はずっと続いており、終わるわけがない。ロシアは消耗戦を平気でやる。最後は小さなウクライナが音を上げると思っているからロシアはやめる気はまったくない。また、ゼレンスキー氏もやめられるわけがない。戦争は、戦場で決まる。交渉では決まらない。両方とも『このままじゃ負けそうだ』と思わない限り、停戦なんかできない。停戦協定なんて破られるためにある。何回も何回も停戦協定は破られ、それでようやく休戦になるものだ。」
ここで宮嶋氏が戦場で実際に身につけていた防弾チョッキがスタジオで披露された。なんと重さは15kgもある。番組秘書・野村明大アナが身につけてみるのだが、着るにも一苦労で動き回るだけで大変そうだ。
防弾チョッキでさえ私たちは触れたことがない。しかし、今年は“戦争”が他人事ではなくなった。日本や世界の平和を守るためにも、私たちが戦争とは何か、平和とは何かを真剣に考える必要があると感じた議論だった。
【文:境治】
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