日本はアメリカと核シェアリングすべきか?結論は、簡単には出せない!
2022.06.21
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ロシアのウクライナ侵攻は終わりが見えない。それに刺激されたかのように、アジアも含めて国際情勢が緊迫度を増している。6月19日放送の「そこまで言って委員会NP」では「一歩踏み込んだ世界情勢」を様々な切り口で議論。中でも「日本はアメリカと核シェアリングすべきか」というヘビーな問いかけに、賛成・反対、双方の意見が飛び交い盛り上がった。
ウクライナ研究会会長の岡部芳彦氏は核シェアリングに反対を表明。「核兵器がなんでも解決する訳ではない」との意見だ。
番組議長・黒木千晶アナからの「そもそもウクライナが核を持ち続けていたら軍事侵攻は起こらなかったとの意見もある。」という指摘に岡部氏は…。「確かにその通りだが、ウクライナが核を放棄した時は国内がかなり不安定な状態だった。当時もし放棄していなかったら世界は大変なことになっていたと思う。テロリストに核が売られてしまう可能性もあったのではないか。1994年にブダペスト覚書で核兵器を放棄したことは意味があった。また、仮に今核兵器を持っていたとしても、今回のロシアの侵攻はかなり非常識な作戦なので、抑止力にはならなかったのではないか。核兵器が全てを解決するわけではないと考える。」
久々に出演した竹田恒泰氏(作家)は「賛成」と回答。「“した方がマシ”と書いた。日本もNATOに入らなきゃダメだ。アメリカはその時の大統領は誰か、世論がどうかなど不確定要素があるがNATOの場合、自動的に反撃することになっている。アメリカと核シェアリングしつつNATOにも入れば、そんな国に攻め込む国はないだろう。」
中林美恵子氏(早稲田大学教授)も「賛成」と回答。ただ「責任の大きさに日本人が堪えられるか」とも懸念する。
「核シェアリングは、前向きに捉えていくべき。ただ、(核を共有すれば)日本は責任も共有しなければならないことになる。本当に核を使用する決断を誰ができるのか?日本がどこまで覚悟があるかを、ちゃんとアメリカにも理解してもらわなければいけない。」
一方で手嶋龍一氏(外交ジャーナリスト)は「非現実的」と回答。
「誰が核のボタンを押すのかを、アメリカは同盟国にも委ねない。そこが本質で、日本に「核ボタン」の重圧に耐えられる政治家がいるのか?とうてい無理。具体的例を一つ挙げると、ホワイトハウスは大統領の寝室のドアの前に椅子があり、夜になるとそこに核のボタン入りのカバンを持った軍事補佐官が控える。もし野村さんがアメリカ大統領になったら、その重圧に堪えきれず夫婦関係を営むことはできないだろう。」
まさかの無茶ぶりに番組秘書・野村明大アナは「そんな例えいらないですから」と困惑していた。
竹中平蔵氏(慶応義塾大学名誉教授)は「賛成、ただし戦略的対話が重要」と回答。「これは二重鍵の議論。マスターキーはずっとアメリカが持つ。セカンドキーを日本が持つことは、メリットもデメリットもある。アメリカが動いてくれない時に日本が呼びかけることもあるし、逆にアメリカが暴走しそうな時に日本がストップする機能もある。重要なのは、シェアリングをするかどうかだけではなく、日米の戦略対話をいかに充実していくか。」
須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)が別の論点を持ち出す。
「なぜ核シェアリングの問題が注目されているのか。ロシアによるウクライナ侵略において、核保有国が非核保有国に対して恫喝したことが理由。核拡散防止条約(NPT)体制は既に崩壊した。NPT体制は、核兵器保有国は非核兵器保有国に対して絶対攻撃しないという大前提のもとに成立していたのだから。」
宮家邦彦氏(外交評論家・立命館大学客員教授)が解説。「核兵器を持つ国が増えてきた。彼らは今までの核の抑止論で抑止されない。そういう状況であれば、日本として当然、核シェアリングのオプションも残すべきだと考える。ただし今の日本の国民感情を考えた時、どこまで議論ができるかという問題はある。」
ここで手嶋氏が再び発言。「今、東アジアの最大の火薬庫は台湾海峡。先日の日米首脳会談の時も、バイデン大統領が台湾海峡の危機にコミットするのかと聞かれて、明らかに失言ではないと思うが、イエスと答えた。1972年の上海コミュニケの心臓部である、台湾条項。これは二つの要素で成り立っていて、一つはワンチャイナを両岸の中国人はそれぞれ認める。もう一つはアメリカ政府が台湾海峡問題の平和的な解決を希求すると述べている。言外には、もしその枠組みが崩れたときには伝家の宝刀を抜くということ、その中には、核兵器の使用も広い意味では含まれる。今回はそれについて「イエス」と言ったということ。アメリカ大統領がこんなことを続けていれば、北京に誤ったシグナルを発することになるかもしれない。バイデン大統領の発言はとても危険だと思う。」
スタジオが緊迫したところで竹田氏が「このじいさんいつも一言多い。」と言って少し空気が緩んだ。
最後に黒木アナが田嶋陽子氏(元参議院議員)に議論の感想を求めた。
「日本は自分の国柄を守るべきだと思う。非核三原則もそうだし、日本国憲法もそうだし、国連憲章もそうだし、この小さな国で国力がだんだん落ちてくところで、軍備(拡張)なんてとんでもない。今、なんでもウクライナに便乗して増強しようとしている。ふざけんじゃないよって感じ。」
田嶋氏のような姿勢を大切にするのか、国民感情を新しい方向へ変えていくのか、大事な局面かもしれない。
【文:境治】
ウクライナ研究会会長の岡部芳彦氏は核シェアリングに反対を表明。「核兵器がなんでも解決する訳ではない」との意見だ。
番組議長・黒木千晶アナからの「そもそもウクライナが核を持ち続けていたら軍事侵攻は起こらなかったとの意見もある。」という指摘に岡部氏は…。「確かにその通りだが、ウクライナが核を放棄した時は国内がかなり不安定な状態だった。当時もし放棄していなかったら世界は大変なことになっていたと思う。テロリストに核が売られてしまう可能性もあったのではないか。1994年にブダペスト覚書で核兵器を放棄したことは意味があった。また、仮に今核兵器を持っていたとしても、今回のロシアの侵攻はかなり非常識な作戦なので、抑止力にはならなかったのではないか。核兵器が全てを解決するわけではないと考える。」
久々に出演した竹田恒泰氏(作家)は「賛成」と回答。「“した方がマシ”と書いた。日本もNATOに入らなきゃダメだ。アメリカはその時の大統領は誰か、世論がどうかなど不確定要素があるがNATOの場合、自動的に反撃することになっている。アメリカと核シェアリングしつつNATOにも入れば、そんな国に攻め込む国はないだろう。」
中林美恵子氏(早稲田大学教授)も「賛成」と回答。ただ「責任の大きさに日本人が堪えられるか」とも懸念する。
「核シェアリングは、前向きに捉えていくべき。ただ、(核を共有すれば)日本は責任も共有しなければならないことになる。本当に核を使用する決断を誰ができるのか?日本がどこまで覚悟があるかを、ちゃんとアメリカにも理解してもらわなければいけない。」
一方で手嶋龍一氏(外交ジャーナリスト)は「非現実的」と回答。
「誰が核のボタンを押すのかを、アメリカは同盟国にも委ねない。そこが本質で、日本に「核ボタン」の重圧に耐えられる政治家がいるのか?とうてい無理。具体的例を一つ挙げると、ホワイトハウスは大統領の寝室のドアの前に椅子があり、夜になるとそこに核のボタン入りのカバンを持った軍事補佐官が控える。もし野村さんがアメリカ大統領になったら、その重圧に堪えきれず夫婦関係を営むことはできないだろう。」
まさかの無茶ぶりに番組秘書・野村明大アナは「そんな例えいらないですから」と困惑していた。
竹中平蔵氏(慶応義塾大学名誉教授)は「賛成、ただし戦略的対話が重要」と回答。「これは二重鍵の議論。マスターキーはずっとアメリカが持つ。セカンドキーを日本が持つことは、メリットもデメリットもある。アメリカが動いてくれない時に日本が呼びかけることもあるし、逆にアメリカが暴走しそうな時に日本がストップする機能もある。重要なのは、シェアリングをするかどうかだけではなく、日米の戦略対話をいかに充実していくか。」
須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)が別の論点を持ち出す。
「なぜ核シェアリングの問題が注目されているのか。ロシアによるウクライナ侵略において、核保有国が非核保有国に対して恫喝したことが理由。核拡散防止条約(NPT)体制は既に崩壊した。NPT体制は、核兵器保有国は非核兵器保有国に対して絶対攻撃しないという大前提のもとに成立していたのだから。」
宮家邦彦氏(外交評論家・立命館大学客員教授)が解説。「核兵器を持つ国が増えてきた。彼らは今までの核の抑止論で抑止されない。そういう状況であれば、日本として当然、核シェアリングのオプションも残すべきだと考える。ただし今の日本の国民感情を考えた時、どこまで議論ができるかという問題はある。」
ここで手嶋氏が再び発言。「今、東アジアの最大の火薬庫は台湾海峡。先日の日米首脳会談の時も、バイデン大統領が台湾海峡の危機にコミットするのかと聞かれて、明らかに失言ではないと思うが、イエスと答えた。1972年の上海コミュニケの心臓部である、台湾条項。これは二つの要素で成り立っていて、一つはワンチャイナを両岸の中国人はそれぞれ認める。もう一つはアメリカ政府が台湾海峡問題の平和的な解決を希求すると述べている。言外には、もしその枠組みが崩れたときには伝家の宝刀を抜くということ、その中には、核兵器の使用も広い意味では含まれる。今回はそれについて「イエス」と言ったということ。アメリカ大統領がこんなことを続けていれば、北京に誤ったシグナルを発することになるかもしれない。バイデン大統領の発言はとても危険だと思う。」
スタジオが緊迫したところで竹田氏が「このじいさんいつも一言多い。」と言って少し空気が緩んだ。
最後に黒木アナが田嶋陽子氏(元参議院議員)に議論の感想を求めた。
「日本は自分の国柄を守るべきだと思う。非核三原則もそうだし、日本国憲法もそうだし、国連憲章もそうだし、この小さな国で国力がだんだん落ちてくところで、軍備(拡張)なんてとんでもない。今、なんでもウクライナに便乗して増強しようとしている。ふざけんじゃないよって感じ。」
田嶋氏のような姿勢を大切にするのか、国民感情を新しい方向へ変えていくのか、大事な局面かもしれない。
【文:境治】
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