ゼレンスキー氏とプーチン氏との関係は、チャップリンとヒットラーの対立に似ている?ゼレンスキー氏の評価で大激論

2022.06.02

ゼレンスキー氏とプーチン氏との関係は、チャップリンとヒットラーの対立に似ている?ゼレンスキー氏の評価で大激論
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5月29日放送の「そこまで言って委員会NP」は「極」がテーマ。様々な「極めた」人をテーマに、それぞれの道を極めたパネリストたちが大激論した。面白いのが、ウクライナのゼレンスキー大統領。突如、時代のヒーローとなったゼレンスキー氏を、論客たちはどう評価するのか?

山口もえ氏はゼレンスキー氏と同い年であることに驚いたようだ。「同じ歳の自分だったらプーチン氏相手にどう交渉していいのかと思う。すごい方だと思った。」
田嶋陽子氏も同調。「この人の言葉を聞くと日本の政治家と比較してしまう。自分の言葉で世界に向けて国民に向けて話し、臨機応変に状況を見ながらきちんと決断する能力がある。そこがすごいと思う。プーチンがいかに時代遅れの人間かと感じさせる。」
宮家邦彦氏も絶賛する。「英雄は生まれた時から英雄ではない。英雄は時代が作る。それと、コメディアンと落語家は、頭が良くないと絶対にできない。
そしてウクライナという地域で何が求められているかを正確に理解し
正確に理解し、プーチンの蛮行を逆手に取った。今までプーチンはウクライナなんて国は認めなかった。ところが今、ウクライナ国家ができつつある。民族を意識させた優秀な政治家だと思う。」
ここで山口真由氏が疑念をさしはさむ。「オフショアカンパニー(海外法人)を3つ持っていた。2019年の投票日の2週間前にその持分を長年の友人に譲り渡している。ある意味資産隠しじゃないかと言われた。コメディ番組を作ったメンバーを側近として登用している。個人の問題というよりウクライナの構造的な問題で、前のポロシェンコなどもみんなそんなことをしている。この辺りはどうなのか。」
須田慎一郎氏がこれを受けて述べる。「ロシアによる侵略がなかったら、凡庸以下のリーダーだっただろう。親しい人を要職につけたり、脱税してみたり。極限までの危機は、人間をここまで変えるのかと思った。大化けしなかったら、例えが悪いが(横山)ノック師匠だっただろう。」

大野裕之氏は「チャップリンとヒトラー」と回答。「ゼレンスキー大統領はプーチンに比べて役者として1枚上手だと本当に思う。『チャップリンとヒトラー』という本を書いたが、チャップリンはみんながヒットラーを支持していた時に、あれは危ないやつだ、笑いのめさなくてはいけないと、1940年に『独裁者』という映画を作って真っ向から勝負した。実は戦争が始まるはるか前、1926年の時点でナチスはチャップリンのバッシングを始めた。笑いの力の方が強いことをわかっていて排除しようとした。しかし、チャップリンの方が1枚上手でヒットラーを笑いのめしたことで、ヒットラーは武器である演説の回数を減らした。武器を奪われてしまい、メディアにおいての戦争は先に決着がついていた。プーチンもメディアの使い方がうまかった。ロックコンサートで大演説し、ものすごいマッチョな体をわざわざ披露したり。それに対しゼレンスキーはTシャツ一枚で出てきてネットを使ってひとりひとりに語りかける。するとみんな同情する。既にメディアにおいては、勝負がついてる。」

歴史的側面から分析する大野氏に、立川志らく氏が別の視点で語る。「ゼレンスキー氏の良くないところを言うと、“現代のチャップリンが出るべきだ”と発言したのが自分はものすごく嫌だった。チャップリンの映画を今もう一度見せてあげればいいだけ。チャップリンは世界で一番面白い男。ヒトラーを茶化したからすごい、『殺人狂時代』で戦争に対する皮肉を言ったからすごい、でもそれは一部であって、チャップリンは、ドタバタ喜劇で一番面白い人なんだと、子どもたちに伝えていかなくちゃいけないのに歴史的な偉人に祭り上げてしまっているから、チャップリンの凄さを壊している。他の大統領ならいいが、ゼレンスキー氏はコメディアン。チャップリンの凄さをわかっている。現代のチャップリンがあるべきだと言われると、この人はチャップリンを落としてると思う。」これに対し大野氏も「おっしゃる通り。だから付け加えておきたいのは、ゼレンスキーがメディアを使うのがうまくチャップリンの戦い方に似てるということで、ゼレンスキー氏がコメディアンとして優れてるかどうかとかでは全然ない。」

コメディアンとしての力量はわからないが、大野氏によるゼレンスキー氏とプーチン氏の関係を、チャップリンとヒットラーに対比させた論はユニークで面白い。『独裁者』を何十年ぶりかで見直すのも一興かもしれない。

【文:境治】
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