日本は”デッドボール”か”バント”しかできない?防衛における日米関係を徹底討論!
2023.02.05
ロシアによるウクライナ侵攻以来、日本も安穏としてはいられなくなった。中国、北朝鮮、そしてロシアの脅威が現実味を増し、防衛についても本気で考えざるをえない。
1月22日放送の「そこまで言って委員会NP」は『日本の防衛』をテーマにし、ロシアのウクライナ侵攻を予見していたのでは?と話題になっているアメリカの作家、トム・クランシーのベストセラー小説『米露開戦』になぞらえて、「今そこにある危機」にどう備えるかを議論した。真に迫る議論が続く中、特に白熱したのが「日米関係」に関するものだった。
RaMu氏(タレント)は「日本があまりにも米軍基地を毛嫌いし続けると・・・」と回答し「日本では、米軍基地反対のデモや座り込みのニュースが目立つ。日本はアメリカに従うしかない。日本がアメリカに嫌われるのが1番怖い。」と述べた。
桜林美佐氏(防衛問題研究家)も「在日米軍への日本の配慮」と、RaMu氏と似た回答。
「日本は、 北朝鮮、中国のミサイルの射程に入っている。さらに大地震は来る、原発事故のリスクもある。『どうしてそんな危険な場所に米軍は行かなければいけないのか』という気持ちで、兵隊の親御さんたちは、自分の子供を在日米軍に送り出しているのが現状。そういう視点で見ると、いかに米軍に『日本にこれからも安心して居てもらえるか』が、日本の安全につながる。日米地位協定は彼らにとって、日本人とうまくやっていくためのルールで、それを一生懸命守って、日本に溶け込むように頑張っている。米軍によってコロナが広まったのではとの話もあったが、海兵隊の一部が基地から外出しただけ。他の海軍や陸軍の人たちも全部一緒に日本人は見てしまいがち。真面目に在留している大半の人たちは、コロナの感染拡大の期間もかなり辛い思いをしながら、日本にいた。そういう人たちへの配慮があってもいいのではないかという気はする。」
森本敏氏(拓殖大学顧問・元防衛大臣)は今後の論点を解説。
「これから日米間でRMC(roles、missions、and capabilities)協議が始まる。日米同盟における日本とアメリカの役割・任務・能力をどのように分担するかの協議だ。 日本の反撃力が強まったため、アメリカのどの部分が負担軽減になるかを見極め、必要であれば今の日米防衛協力のガイドラインを手直ししていく。どうやってアメリカを引き止めて、重要な役割を果たしてもらい、日本がどのようにサポートするのかが大切だ。アメリカはインド太平洋に非常に大きな利益を持っているので、ウクライナの問題がひと段落すれば、中国に対抗するためにインド太平洋に必要なアセット(軍事的資源)を動かしてくる。きちっとした日米同盟が維持できていなければ日本は国家の安全を維持できない。」
宮家邦彦氏(立命館大学客員教授)はアメリカの立場を踏まえて論じる。
「アメリカは、日本なしには戦えない。中国を抑止しようと思ったら、 日本の基地がなければできない。同時に日本も中国を抑止するのに、アメリカなしでは抑止できない。だからお互いに協力して戦わなければならない。」
竹田恒泰氏(作家)は不安なことを言う。
「ケント・ギルバート(カリフォルニア州弁護士)さんと話したときに聞いたが、日本人は日米安保条約のことを小学生でも知っているが、一般的なアメリカ人は、日米安保のことを知らないらしい。有事の際に『日本人を守るためにアメリカ軍が血を流さなければならない』と説明しても、アメリカ国民は『えっ?なんで!?』となるというのだ。米軍はもしかしたら「あまり日本の危機に関与してくれないかもしれない」という事を前提に考えなければいけない気もする。」
井上和彦氏(軍事ジャーナリスト)はそれぞれの論を受けて熱く語る。
「アメリカにとって日本の米軍基地はものすごく重要な戦略拠点。日本の基地を失えば、中国の脅威に対してグアム・ハワイという“点”でしか支えられなくなる。自分の国益を守るためにアメリカは日本を守る。日米関係を野球に例えると、いわば日本は『守備専門の野球チーム』。攻撃は1番から9番まで、全員がアメリカの大リーグから連れてきた指名打者と同じ。日本はバッターボックスに立ったことがない。攻撃したことがない。これから「反撃能力」と「敵基地攻撃能力」を持とうというが、やったことがない。しかも、そこに足かせがあって、“必要最小限度の実力行使”となっている。では有事の際、日本がバッターボックスに立った時に なにができるのかというと、“正当防衛”と“緊急避難”と“自己装備品の防護”。デッドボールに当たりに行くくらいのことしかできない。」
そこへ竹田氏がツッコミを入れる。
「必要最小限度だと、”バント”まで?」
一同爆笑の中、井上氏がそれを受けて言う。
「そう、”ヒット”は打ってはダメ!」
笑えるけれど笑えない。
中国を意識すると日本の基地に駐留する米軍は、大事だと再認識し、一方で、日本の自衛隊が中途半端な立場に置かれていることもよくわかる議論だった。
これまで私たちがあまり真剣に考えてこなかった防衛問題、防衛費増額の議論や安全保障も含めて、今こそ本気で考えるべき大切な問題であることは間違いない。
【文:境治】
1月22日放送の「そこまで言って委員会NP」は『日本の防衛』をテーマにし、ロシアのウクライナ侵攻を予見していたのでは?と話題になっているアメリカの作家、トム・クランシーのベストセラー小説『米露開戦』になぞらえて、「今そこにある危機」にどう備えるかを議論した。真に迫る議論が続く中、特に白熱したのが「日米関係」に関するものだった。
RaMu氏(タレント)は「日本があまりにも米軍基地を毛嫌いし続けると・・・」と回答し「日本では、米軍基地反対のデモや座り込みのニュースが目立つ。日本はアメリカに従うしかない。日本がアメリカに嫌われるのが1番怖い。」と述べた。
桜林美佐氏(防衛問題研究家)も「在日米軍への日本の配慮」と、RaMu氏と似た回答。
「日本は、 北朝鮮、中国のミサイルの射程に入っている。さらに大地震は来る、原発事故のリスクもある。『どうしてそんな危険な場所に米軍は行かなければいけないのか』という気持ちで、兵隊の親御さんたちは、自分の子供を在日米軍に送り出しているのが現状。そういう視点で見ると、いかに米軍に『日本にこれからも安心して居てもらえるか』が、日本の安全につながる。日米地位協定は彼らにとって、日本人とうまくやっていくためのルールで、それを一生懸命守って、日本に溶け込むように頑張っている。米軍によってコロナが広まったのではとの話もあったが、海兵隊の一部が基地から外出しただけ。他の海軍や陸軍の人たちも全部一緒に日本人は見てしまいがち。真面目に在留している大半の人たちは、コロナの感染拡大の期間もかなり辛い思いをしながら、日本にいた。そういう人たちへの配慮があってもいいのではないかという気はする。」
森本敏氏(拓殖大学顧問・元防衛大臣)は今後の論点を解説。
「これから日米間でRMC(roles、missions、and capabilities)協議が始まる。日米同盟における日本とアメリカの役割・任務・能力をどのように分担するかの協議だ。 日本の反撃力が強まったため、アメリカのどの部分が負担軽減になるかを見極め、必要であれば今の日米防衛協力のガイドラインを手直ししていく。どうやってアメリカを引き止めて、重要な役割を果たしてもらい、日本がどのようにサポートするのかが大切だ。アメリカはインド太平洋に非常に大きな利益を持っているので、ウクライナの問題がひと段落すれば、中国に対抗するためにインド太平洋に必要なアセット(軍事的資源)を動かしてくる。きちっとした日米同盟が維持できていなければ日本は国家の安全を維持できない。」
宮家邦彦氏(立命館大学客員教授)はアメリカの立場を踏まえて論じる。
「アメリカは、日本なしには戦えない。中国を抑止しようと思ったら、 日本の基地がなければできない。同時に日本も中国を抑止するのに、アメリカなしでは抑止できない。だからお互いに協力して戦わなければならない。」
竹田恒泰氏(作家)は不安なことを言う。
「ケント・ギルバート(カリフォルニア州弁護士)さんと話したときに聞いたが、日本人は日米安保条約のことを小学生でも知っているが、一般的なアメリカ人は、日米安保のことを知らないらしい。有事の際に『日本人を守るためにアメリカ軍が血を流さなければならない』と説明しても、アメリカ国民は『えっ?なんで!?』となるというのだ。米軍はもしかしたら「あまり日本の危機に関与してくれないかもしれない」という事を前提に考えなければいけない気もする。」
井上和彦氏(軍事ジャーナリスト)はそれぞれの論を受けて熱く語る。
「アメリカにとって日本の米軍基地はものすごく重要な戦略拠点。日本の基地を失えば、中国の脅威に対してグアム・ハワイという“点”でしか支えられなくなる。自分の国益を守るためにアメリカは日本を守る。日米関係を野球に例えると、いわば日本は『守備専門の野球チーム』。攻撃は1番から9番まで、全員がアメリカの大リーグから連れてきた指名打者と同じ。日本はバッターボックスに立ったことがない。攻撃したことがない。これから「反撃能力」と「敵基地攻撃能力」を持とうというが、やったことがない。しかも、そこに足かせがあって、“必要最小限度の実力行使”となっている。では有事の際、日本がバッターボックスに立った時に なにができるのかというと、“正当防衛”と“緊急避難”と“自己装備品の防護”。デッドボールに当たりに行くくらいのことしかできない。」
そこへ竹田氏がツッコミを入れる。
「必要最小限度だと、”バント”まで?」
一同爆笑の中、井上氏がそれを受けて言う。
「そう、”ヒット”は打ってはダメ!」
笑えるけれど笑えない。
中国を意識すると日本の基地に駐留する米軍は、大事だと再認識し、一方で、日本の自衛隊が中途半端な立場に置かれていることもよくわかる議論だった。
これまで私たちがあまり真剣に考えてこなかった防衛問題、防衛費増額の議論や安全保障も含めて、今こそ本気で考えるべき大切な問題であることは間違いない。
【文:境治】
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