ウクライナ侵略で「憲法改正議論」すすめるべき?そうではない?
2022.07.01
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世の中の変化により、新たな事件や犯罪の出現により従来の法律の運用や解釈が難しくなってきている。6月26日放送の「そこまで言って委員会NP」では大好評企画「四方八方六法全書」の第3版として、児童福祉法、AV出演被害防止・救済法、死刑執行の告知の在り方、ファスト映画などを議論したが、中でも憲法改正論議については賛成と反対、双方の力強い意見で盛り上がった。
立川志らく氏(落語家)は憲法改正について「賛成」を打ち出した。「時代と共にルールが変化するのは当然」との考えだ。
「平和憲法を否定するつもりはないが、現実的にルールが変わってきている。憲法だけ頑なに変えないとする理由は、戦争放棄をうたう9条を変えてしまうのはどうなのかという不安。その一点だろう。」と語った。
今回初登場の弁護士・佐藤みのり氏は憲法改正に「反対」を掲げる。「どこを変えるかによっても話が変わるが、“緊急事態条項”の導入で国家権力を強く動かせるようにする方向に改正するのならば、国家権力が暴走する可能性がある。自衛隊が海外に出て行きやすくなり、人を殺したり自分が殺されたりする場面が増えるかもしれない。果たして改正は本当に平和に繋がるのか。」
この意見に竹田恒泰氏(作家)は憲法改正「賛成」の立場で反論。「9条を変えようと言っている人は全員が戦争をしたいのではなく、侵略を受けたときにちゃんと国を守れるようにしようと言っているだけ。」
そう主張する竹田氏にやはり弁護士の紀藤正樹氏が絡む。「政治家はそういうつもりかもしれないが、官僚が政治家を騙したり、あるいは忖度したりする土壌が根強くあるので、その理想は達成できないし、暴走の危険がつきまとう。」
竹田氏がすかさず返す。「それは異なった問題。本来国防のために持つべき軍備が持てないという問題と、自衛隊がシビリアンコントロールに服すかどうかは別の話だ。①しっかりと国を守ることができる自衛隊なり、軍なりを持つこと。②それがしっかりとシビリアンコントロールに服すこと。この両方を国は行わなければいけない。」
門田隆将氏(作家・ジャーナリスト)も憲法改正「賛成」側で述べる。「現実に尖閣を自分のものだと主張している中国からどうやって日本を守るのか。集団安保体制をとり自衛隊も合憲化し、抑止力を高めて、国民の命と平和を守らなければ、私たちは今、ウクライナと同じような状況になりかねない。その岐路に立っている。抑止力ができる憲法に変え、日本を子々孫々まで存続させないとだめだと思う。」
山口真由氏(元財務省官僚)は「反対」としたがややニュートラルだ。「私は護憲派ではないが、憲法を改正してまで何がやりたいのかが問題だ。自衛隊は違憲だという憲法学者の論争はあるが、最高裁は自衛隊を絶対に違憲とは言わないだろう。憲法を改正するなら集団安全保障に入りたいかという議論をセットにすべきではないか。」
竹田氏がまた反論。「僕はそもそも憲法改正をしなければ、自衛権を行使できないのではと思う。なぜなら自衛隊は軍じゃないので、一般の国の軍ができることができない。普通の軍の規律はネガティブリストといって“やってはならないこと”が書いてある。裏を返せば“書いていないこと”は“何をやってもいい”。逆に自衛隊は“やっていいこと”だけ書いてあって、書いてないことは禁止。もしロシアが北海道に攻めてきたら、自衛隊の戦車は、交差点の赤信号で止まらなければならない。パトカーがランプを回して戦車の先導をしなければならない。さらに言うと、”相手に攻撃されてはじめて反撃してもよい”というのが専守防衛という考え方だが、現代の戦闘では、攻撃された瞬間に死んでしまう。」
田嶋陽子氏(元参院議員)が「反対」の立場で喋り出す。「交戦権を認めると言っても、極端な話、これだけ国力が違い、人口が日本の15倍もあるような国が攻めてきたら日本なんて、もう一瞬でなくなるだろう。」
これに対し八代英輝氏(弁護士)が「賛成」側として発言。「田嶋先生のおっしゃる通りだが、今の法律はさらに酷く、自衛隊が有事のときに従うべき法律は警察官の法律。だから自衛官は正当防衛しか認められない。向こうから一発打たれ、それを何とかかわしてからじゃないと、こっちから打ち返せない。」
門田氏が加えて述べる。「田嶋氏はさっき本質を言った。個別で戦っても勝てるわけない。だから、抑止力のために集団安保体制を早く構築しなければならない。要するにアジア版NATO。集団安保体制に入ることで、日本に手を出すと大変な目に遭うという抑止力を構築し、平和と国民の生命を守っていかなければいけない。そのときが今、ついに来たということ。」
ヒートアップする改憲派に田嶋氏は「ウクライナの情勢に流されてみんな頭がおかしくなっている。」と言い放つ。しかし門田氏も「ウクライナの情勢でやっと、私たちがずっと言い続けてきたことが、『その通りだったでしょ』となった。」とひかない。
田嶋氏も反論を続け、終わりそうにない。
議長・黒木千晶アナが神妙な顔つきで「これからもこの議論については、引き続きやっていきたいと思いますが、最後に志らくさん、一言おねがいします。」と振ると、志らく氏は「家に帰ったらAVを見ます。」と即答。このテーマの前に議論をしたAV出演被害防止・救済法のネタでオチをつけ、議論は持ち越しとなった。
ウクライナ侵略で急に日本の安全保障や憲法改正の事を考えはじめた人も多いことだろう。また自衛隊が警察の法律に従わざるを得ない事実は防衛上の矛盾を生む。一方で、平和憲法の精神も守りたいと多くの人が感じているはずだ。この議論は簡単に決着できないが、先延ばしにもできそうにない。一人一人が考える大切な問題なのだ。
【文:境治】
立川志らく氏(落語家)は憲法改正について「賛成」を打ち出した。「時代と共にルールが変化するのは当然」との考えだ。
「平和憲法を否定するつもりはないが、現実的にルールが変わってきている。憲法だけ頑なに変えないとする理由は、戦争放棄をうたう9条を変えてしまうのはどうなのかという不安。その一点だろう。」と語った。
今回初登場の弁護士・佐藤みのり氏は憲法改正に「反対」を掲げる。「どこを変えるかによっても話が変わるが、“緊急事態条項”の導入で国家権力を強く動かせるようにする方向に改正するのならば、国家権力が暴走する可能性がある。自衛隊が海外に出て行きやすくなり、人を殺したり自分が殺されたりする場面が増えるかもしれない。果たして改正は本当に平和に繋がるのか。」
この意見に竹田恒泰氏(作家)は憲法改正「賛成」の立場で反論。「9条を変えようと言っている人は全員が戦争をしたいのではなく、侵略を受けたときにちゃんと国を守れるようにしようと言っているだけ。」
そう主張する竹田氏にやはり弁護士の紀藤正樹氏が絡む。「政治家はそういうつもりかもしれないが、官僚が政治家を騙したり、あるいは忖度したりする土壌が根強くあるので、その理想は達成できないし、暴走の危険がつきまとう。」
竹田氏がすかさず返す。「それは異なった問題。本来国防のために持つべき軍備が持てないという問題と、自衛隊がシビリアンコントロールに服すかどうかは別の話だ。①しっかりと国を守ることができる自衛隊なり、軍なりを持つこと。②それがしっかりとシビリアンコントロールに服すこと。この両方を国は行わなければいけない。」
門田隆将氏(作家・ジャーナリスト)も憲法改正「賛成」側で述べる。「現実に尖閣を自分のものだと主張している中国からどうやって日本を守るのか。集団安保体制をとり自衛隊も合憲化し、抑止力を高めて、国民の命と平和を守らなければ、私たちは今、ウクライナと同じような状況になりかねない。その岐路に立っている。抑止力ができる憲法に変え、日本を子々孫々まで存続させないとだめだと思う。」
山口真由氏(元財務省官僚)は「反対」としたがややニュートラルだ。「私は護憲派ではないが、憲法を改正してまで何がやりたいのかが問題だ。自衛隊は違憲だという憲法学者の論争はあるが、最高裁は自衛隊を絶対に違憲とは言わないだろう。憲法を改正するなら集団安全保障に入りたいかという議論をセットにすべきではないか。」
竹田氏がまた反論。「僕はそもそも憲法改正をしなければ、自衛権を行使できないのではと思う。なぜなら自衛隊は軍じゃないので、一般の国の軍ができることができない。普通の軍の規律はネガティブリストといって“やってはならないこと”が書いてある。裏を返せば“書いていないこと”は“何をやってもいい”。逆に自衛隊は“やっていいこと”だけ書いてあって、書いてないことは禁止。もしロシアが北海道に攻めてきたら、自衛隊の戦車は、交差点の赤信号で止まらなければならない。パトカーがランプを回して戦車の先導をしなければならない。さらに言うと、”相手に攻撃されてはじめて反撃してもよい”というのが専守防衛という考え方だが、現代の戦闘では、攻撃された瞬間に死んでしまう。」
田嶋陽子氏(元参院議員)が「反対」の立場で喋り出す。「交戦権を認めると言っても、極端な話、これだけ国力が違い、人口が日本の15倍もあるような国が攻めてきたら日本なんて、もう一瞬でなくなるだろう。」
これに対し八代英輝氏(弁護士)が「賛成」側として発言。「田嶋先生のおっしゃる通りだが、今の法律はさらに酷く、自衛隊が有事のときに従うべき法律は警察官の法律。だから自衛官は正当防衛しか認められない。向こうから一発打たれ、それを何とかかわしてからじゃないと、こっちから打ち返せない。」
門田氏が加えて述べる。「田嶋氏はさっき本質を言った。個別で戦っても勝てるわけない。だから、抑止力のために集団安保体制を早く構築しなければならない。要するにアジア版NATO。集団安保体制に入ることで、日本に手を出すと大変な目に遭うという抑止力を構築し、平和と国民の生命を守っていかなければいけない。そのときが今、ついに来たということ。」
ヒートアップする改憲派に田嶋氏は「ウクライナの情勢に流されてみんな頭がおかしくなっている。」と言い放つ。しかし門田氏も「ウクライナの情勢でやっと、私たちがずっと言い続けてきたことが、『その通りだったでしょ』となった。」とひかない。
田嶋氏も反論を続け、終わりそうにない。
議長・黒木千晶アナが神妙な顔つきで「これからもこの議論については、引き続きやっていきたいと思いますが、最後に志らくさん、一言おねがいします。」と振ると、志らく氏は「家に帰ったらAVを見ます。」と即答。このテーマの前に議論をしたAV出演被害防止・救済法のネタでオチをつけ、議論は持ち越しとなった。
ウクライナ侵略で急に日本の安全保障や憲法改正の事を考えはじめた人も多いことだろう。また自衛隊が警察の法律に従わざるを得ない事実は防衛上の矛盾を生む。一方で、平和憲法の精神も守りたいと多くの人が感じているはずだ。この議論は簡単に決着できないが、先延ばしにもできそうにない。一人一人が考える大切な問題なのだ。
【文:境治】
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