新モノマネ女王を支えるメンタル、そして、憧れの先輩芸人とは
2020.09.10
「ロバート」秋山竜次さん、土屋太鳳さんらのモノマネで注目を集める丸山礼さん(23)。YouTubeチャンネルの登録者数も77万人に達し、来月には自身の体型に合わせたファッションブランドも立ち上げます。まさに、多岐に渡り存在感を見せていますが、目指す到達点は高校時代からあこがれ続けた先輩芸人でした。
―現時点でYouTubeのチャンネル登録者数が約77万人。かなりの反響があるのでは?
週1回のペースで動画をアップしているんですけど、街で声をかけてくれる人のほとんどが「YouTube見てます!」と言ってくれますね。女子高生とかティーンの女の子が多いんですけど、彼女らの中では完全に“YouTubeの人”という認識のようで。自分の中でもYouTubeは間違いなく大きな軸にはなっています。
―昔から、この世界への思いはあったのですか?
もともと、モノマネには興味がありました。ただ、直接的に人前に出るきっかけになったのは中学の時。文化祭で“そんなにやる気がないのに踊って目立ちたいという女子”の姿を見て「そんなクオリティーのものをやるなら、私がもっとマジですごいヤツを見せてやる!」とむかついてやったのがきっかけでした(笑)。
でも、それを仕事にする意識はなくて、高校では特進コースのクラスに進みました。なので、自分の中では教育大学に行って学校の先生になるくらいの感じで思っていたんです。
そんな中、高校3年で大学の願書を出す時期に、ワタナベコメディースクールのオーディションが地元の北海道であったんです。遠方まで行く必要もないし、腕試し的に一回行ってみようかな。そんな気持ちで受けてみたんです。
MISIAさんとか近藤春奈さんのモノマネをやったんですけど、なんと、ありがたいことに特待生としてタダでスクールに入れることになりまして。
家が経済的に豊かではないこともあったし、兄が私立大学に進学したことで、さらに家計が楽ではないのも見ていたので「タダで東京の学校に行けるなら」と思ってワタナベのスクールに進むことを決めました。
そんな流れで入っているので、実際スクールが始まると「タダで入らせてもらっているんだから、ちゃんとしなきゃ」という気持ちがすごく強く出てきたんです。それが周りから見ると「トガってる」と見えたみたいで。確かに、誰にも負けたくないという思いがかなり出ていたとは思います。
そういった向こうっ気はあるけれど、そもそも、お笑いが大好きで入ってきたということではないので、どんな風にネタをやったらいいのかも分からない。さらには、何が面白いのかも実は分からない。毎日が苦痛で、実家に帰りたい。でも、特待生として入れてもらったんだからやらないと…。そんな思いを行き来する日々でした。
それがやっと少し落ち着いたのは、入学から半年後にあったスクールのライブ。そこで1位になったんです。その時にやったネタが「ロバート」秋山さんのモノマネでした。そこからあれよあれよという間にテレビにも出してもらうようになって、スクールを出てすぐ日本テレビ「PON!」のレギュラーをいただきました。
キャリアはないのに、大きなお仕事をいただく。そうなると、どうしても、その時で一番自信があるネタをやりがちになってしまい、私はずっと秋山さんのモノマネで乗り切っていました。
実際、秋山さんのことは、小さい頃から大好きで「はねるのトびら」(フジテレビ)のビデオテープを擦り切れるくらい見たり、すごく思い入れのある人だったんです。
そして「PON!」を卒業するタイミングで、秋山さんから言葉をいただきました。
「もっと大物をやれぇ~。オレにとらわれるな~」
いつもみたいなふざけた感じでおっしゃってましたし、秋山さんにしたら、シャレも込みでおっしゃったことかもしれないんですけど、私にとってはそれがずっと頭の中で繰り返し響く言葉になったんです。
「オレのことをやってくれるのはありがたいけど、それとは別に自分の武器になるものをいくつか持ってないとこれから先しんどくなるよ」
私の勝手な解釈かもしれませんけど、そういう思いをくださったと思っています。
秋山さんのモノマネが一番面白いから、秋山さんのモノマネしかやりたくない。それも正直な思いだったんですけど、それだけじゃ食べていけない。その思いも自分の中にある。秋山さんがどうこうじゃなく、そのままだと“それだけの人”になっちゃうと。
ただ、秋山さんの言葉のおかげで「視野を広げないといけない」という思いになって、そこから土屋太鳳ちゃんだとか、他のモノマネも磨いていこうとなったんです。
―現時点でYouTubeのチャンネル登録者数が約77万人。かなりの反響があるのでは?
週1回のペースで動画をアップしているんですけど、街で声をかけてくれる人のほとんどが「YouTube見てます!」と言ってくれますね。女子高生とかティーンの女の子が多いんですけど、彼女らの中では完全に“YouTubeの人”という認識のようで。自分の中でもYouTubeは間違いなく大きな軸にはなっています。
―昔から、この世界への思いはあったのですか?
もともと、モノマネには興味がありました。ただ、直接的に人前に出るきっかけになったのは中学の時。文化祭で“そんなにやる気がないのに踊って目立ちたいという女子”の姿を見て「そんなクオリティーのものをやるなら、私がもっとマジですごいヤツを見せてやる!」とむかついてやったのがきっかけでした(笑)。
でも、それを仕事にする意識はなくて、高校では特進コースのクラスに進みました。なので、自分の中では教育大学に行って学校の先生になるくらいの感じで思っていたんです。
そんな中、高校3年で大学の願書を出す時期に、ワタナベコメディースクールのオーディションが地元の北海道であったんです。遠方まで行く必要もないし、腕試し的に一回行ってみようかな。そんな気持ちで受けてみたんです。
MISIAさんとか近藤春奈さんのモノマネをやったんですけど、なんと、ありがたいことに特待生としてタダでスクールに入れることになりまして。
家が経済的に豊かではないこともあったし、兄が私立大学に進学したことで、さらに家計が楽ではないのも見ていたので「タダで東京の学校に行けるなら」と思ってワタナベのスクールに進むことを決めました。
そんな流れで入っているので、実際スクールが始まると「タダで入らせてもらっているんだから、ちゃんとしなきゃ」という気持ちがすごく強く出てきたんです。それが周りから見ると「トガってる」と見えたみたいで。確かに、誰にも負けたくないという思いがかなり出ていたとは思います。
そういった向こうっ気はあるけれど、そもそも、お笑いが大好きで入ってきたということではないので、どんな風にネタをやったらいいのかも分からない。さらには、何が面白いのかも実は分からない。毎日が苦痛で、実家に帰りたい。でも、特待生として入れてもらったんだからやらないと…。そんな思いを行き来する日々でした。
それがやっと少し落ち着いたのは、入学から半年後にあったスクールのライブ。そこで1位になったんです。その時にやったネタが「ロバート」秋山さんのモノマネでした。そこからあれよあれよという間にテレビにも出してもらうようになって、スクールを出てすぐ日本テレビ「PON!」のレギュラーをいただきました。
キャリアはないのに、大きなお仕事をいただく。そうなると、どうしても、その時で一番自信があるネタをやりがちになってしまい、私はずっと秋山さんのモノマネで乗り切っていました。
実際、秋山さんのことは、小さい頃から大好きで「はねるのトびら」(フジテレビ)のビデオテープを擦り切れるくらい見たり、すごく思い入れのある人だったんです。
そして「PON!」を卒業するタイミングで、秋山さんから言葉をいただきました。
「もっと大物をやれぇ~。オレにとらわれるな~」
いつもみたいなふざけた感じでおっしゃってましたし、秋山さんにしたら、シャレも込みでおっしゃったことかもしれないんですけど、私にとってはそれがずっと頭の中で繰り返し響く言葉になったんです。
「オレのことをやってくれるのはありがたいけど、それとは別に自分の武器になるものをいくつか持ってないとこれから先しんどくなるよ」
私の勝手な解釈かもしれませんけど、そういう思いをくださったと思っています。
秋山さんのモノマネが一番面白いから、秋山さんのモノマネしかやりたくない。それも正直な思いだったんですけど、それだけじゃ食べていけない。その思いも自分の中にある。秋山さんがどうこうじゃなく、そのままだと“それだけの人”になっちゃうと。
ただ、秋山さんの言葉のおかげで「視野を広げないといけない」という思いになって、そこから土屋太鳳ちゃんだとか、他のモノマネも磨いていこうとなったんです。
©ytv
―来月にはファッションブランドも立ち上げる?
そうなんです。今の世の中、SNSでファンの方と簡単に繋がれるし、コメントもいただけます。それが誹謗中傷などに繋がったら大変な部分もあるんですけど、とにかく生の声をたくさん聞くことができる。
そういったやり取りの中で、本当によく言われていたのが「自分の体型に合う服がない」ということだったんです。実は、私もそれですごく悩んでいて、解消するような服があったらいいなという思いは前々からあったんです。
そこでありがたい話、自分が「こんな服があったらいいな」と思うようなファッションブランドを来月から立ち上げることにもなったんですけど、そこにも昔から憧れている方の影響が色濃くありまして。それが渡辺直美さんなんです。
直美さんも自分のブランドを立ち上げてらっしゃいますし、私から見ると、全てにオールマイティーなんです。ネタも面白いし、トークも面白いし、お芝居もできるし、その上、ファッション分野のこともやってらっしゃる。しかも自分がファッション界のアイコンにもなっている。さらに、さらに、それが日本のみならず、海外にも届いている。その全てが本当にすごいなと。
―確かに、もはや日本の渡辺直美ではなく、世界の渡辺直美でもありますものね。
私の場合、ネタをやって賞レースで勝つというよりも、例えば、東京ガールズコレクションとかに出していただくようになって、そういう方法で喜んでいただくのが目指すべき方向性なのかなと。
きらびやかな世界への浮ついた気持ちではなく(笑)、自分の色と何が合うのかを考えた時に、そういう方向を目指すのが一番いいのかなと思いまして。本当にリアルな話として。でも、でも、その中には、やっぱり直美さんへの思いがしっかりとあるんですよね。直美さんもそうやってらっしゃるという。
そのためにも、もっともっと私自身を広く皆さんに知ってもらわないといけないし、そのためにできることはどんどんやっていきたいと思います。
―そのためにも日々心掛けていることなどあります?
これでもかと人間観察をしちゃってますね(笑)。これは完全にクセです。この前、京葉線に乗ってたんですけど、前の席に、恐らく就活生の方とおぼしき女性が座ってたんです。
面接前だからかなり緊張していたみたいで、見るからにガチガチなのが分かるくらいなんです。だから、リラックスしなきゃと自分でも思ったんでしょうけど、空手の型みたいな動きを電車内でやりだしたんです。
もうそうなると、完全に目が離せなくなりまして(笑)。瞬間的に「この人なんなんだろう…」というスイッチが入って、これは私の悪いクセなんですけど…、笑いがこらえなくなるんです(笑)。
そうやって監察の結果、自分の心のストックにあらゆる方の行動パターンを入れていって、それをネタなり、動画なりに、入れていっている感じです。
なので、場合によっては、よく会う人のことをネタにしている時もあって、そんな流れだと元ネタになってるご本人が「…あれ、これって、私を元ネタにしているよな」と気づかれることもあるんですけど、それでもくじけることなく、またマネにかかるというメンタルも私の悪いクセです(笑)。
そうなんです。今の世の中、SNSでファンの方と簡単に繋がれるし、コメントもいただけます。それが誹謗中傷などに繋がったら大変な部分もあるんですけど、とにかく生の声をたくさん聞くことができる。
そういったやり取りの中で、本当によく言われていたのが「自分の体型に合う服がない」ということだったんです。実は、私もそれですごく悩んでいて、解消するような服があったらいいなという思いは前々からあったんです。
そこでありがたい話、自分が「こんな服があったらいいな」と思うようなファッションブランドを来月から立ち上げることにもなったんですけど、そこにも昔から憧れている方の影響が色濃くありまして。それが渡辺直美さんなんです。
直美さんも自分のブランドを立ち上げてらっしゃいますし、私から見ると、全てにオールマイティーなんです。ネタも面白いし、トークも面白いし、お芝居もできるし、その上、ファッション分野のこともやってらっしゃる。しかも自分がファッション界のアイコンにもなっている。さらに、さらに、それが日本のみならず、海外にも届いている。その全てが本当にすごいなと。
―確かに、もはや日本の渡辺直美ではなく、世界の渡辺直美でもありますものね。
私の場合、ネタをやって賞レースで勝つというよりも、例えば、東京ガールズコレクションとかに出していただくようになって、そういう方法で喜んでいただくのが目指すべき方向性なのかなと。
きらびやかな世界への浮ついた気持ちではなく(笑)、自分の色と何が合うのかを考えた時に、そういう方向を目指すのが一番いいのかなと思いまして。本当にリアルな話として。でも、でも、その中には、やっぱり直美さんへの思いがしっかりとあるんですよね。直美さんもそうやってらっしゃるという。
そのためにも、もっともっと私自身を広く皆さんに知ってもらわないといけないし、そのためにできることはどんどんやっていきたいと思います。
―そのためにも日々心掛けていることなどあります?
これでもかと人間観察をしちゃってますね(笑)。これは完全にクセです。この前、京葉線に乗ってたんですけど、前の席に、恐らく就活生の方とおぼしき女性が座ってたんです。
面接前だからかなり緊張していたみたいで、見るからにガチガチなのが分かるくらいなんです。だから、リラックスしなきゃと自分でも思ったんでしょうけど、空手の型みたいな動きを電車内でやりだしたんです。
もうそうなると、完全に目が離せなくなりまして(笑)。瞬間的に「この人なんなんだろう…」というスイッチが入って、これは私の悪いクセなんですけど…、笑いがこらえなくなるんです(笑)。
そうやって監察の結果、自分の心のストックにあらゆる方の行動パターンを入れていって、それをネタなり、動画なりに、入れていっている感じです。
なので、場合によっては、よく会う人のことをネタにしている時もあって、そんな流れだと元ネタになってるご本人が「…あれ、これって、私を元ネタにしているよな」と気づかれることもあるんですけど、それでもくじけることなく、またマネにかかるというメンタルも私の悪いクセです(笑)。
©ytv
■取材後記
今年2月にも別の連載でインタビューをしたのですが、今回会った瞬間にハッとしました。というのは、その時よりも格段に綺麗になっていたからです。
もちろん、お召し物がきらびやかなものになっていたのもあるかもしれませんが、内面からにじみ出る輝きが格段に増してました。
2月の段階では、YouTubeの登録者数が約50万人。そこからわずか半年ほどで77万人まで急増。そこにはもちろん努力もいるし、そして、それだけの人に見られるということは、画面越しであったとしても人を磨くのだなとピカピカのお肌を見て思いました。
もう一方、僕が忘れられないのが取材終了後、次の現場に向かおうとビルのエレベーターに乗り込んだ僕に向かい、ドアが閉まるまで深々とお辞儀をしていた姿。
溢れる自信とどこまでも本気の謙虚さ。このバランスが丸山さんを支える奇跡のシステムなのだと強く感じました。
今年2月にも別の連載でインタビューをしたのですが、今回会った瞬間にハッとしました。というのは、その時よりも格段に綺麗になっていたからです。
もちろん、お召し物がきらびやかなものになっていたのもあるかもしれませんが、内面からにじみ出る輝きが格段に増してました。
2月の段階では、YouTubeの登録者数が約50万人。そこからわずか半年ほどで77万人まで急増。そこにはもちろん努力もいるし、そして、それだけの人に見られるということは、画面越しであったとしても人を磨くのだなとピカピカのお肌を見て思いました。
もう一方、僕が忘れられないのが取材終了後、次の現場に向かおうとビルのエレベーターに乗り込んだ僕に向かい、ドアが閉まるまで深々とお辞儀をしていた姿。
溢れる自信とどこまでも本気の謙虚さ。このバランスが丸山さんを支える奇跡のシステムなのだと強く感じました。
執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)
1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
中西 正男(なかにし まさお)
1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
この記事を共有する
関連記事一覧
双子で漫才をやるということ。「ダイタク」が語るメリットとデメリット
2021.06.10「お前らは大丈夫」。「アイロンヘッド」を支える先輩の重い言葉
2021.05.10「おもしろ荘」優勝からブレーク。最旬コンビ「ダイヤモンド」が放つ色香
2021.03.10お笑いへのエナジーとかわいげ。「ゼンモンキー」に見る無限の奥行き
2021.02.10