他者を励ますということ
2021.08.31
他人を励ますという行為は、いつの時代も難しいものですが、現在のようなコロナ社会においては、特に難易度が増しているように思います。
放送中の「ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜」。今、毎週楽しみに見ているドラマです。戸田恵梨香さん扮する元エース刑事・藤聖子と、永野芽郁さん演じる新人警察官・川合麻依の二人を軸に、交番勤務の日常が主題になっているのですが、私が一番気に入っているのは、2人の関係性の描かれ方です。縦社会にガチガチに囚われることなく、かといって友達同然の緩すぎるやり取りに終始することもない。硬すぎず、柔らかすぎないバランスが絶妙です。
25日の放送では、交通事故のあまりに辛い現場に遭遇した川合が、精神的に大きなショックを受け、仕事を続けることができなくなります。どうやら藤には、過去に同僚警官との間に辛い経験があるようで、そのこともあってか?普段から飛びきり可愛がっている川合をどう励ましてやればいいのか、大いに迷うのです。そこがとてもリアルでした。ドラマをまだご覧になっておられない方もいらっしゃるでしょうから、その先の展開は細かくは控えておきますが、仲間たちの、川合をそして藤を思う気持ちが実を結び、いい方向へと導かれていくのです。
他人を励ましたり助言したりする際、時として自らの思いを半ば強引に押し付けるタイプの方がいます。いわば「親切の押し売り」とでも申しましょうか。さほど相手が聞きたいとは思ってはいない自身の経験談を長々と語り、「だから君も大丈夫!」と、話をまとめます。気持ちが軽くなっているのは、悩んでいる当事者ではなく、アドバイスしている方というケースも実は少なくないかもしれません。
少しだけ話を拡げますが、今世の中に加速度的に増えているのは、自らに都合の良いことばかりを主張し、不利益なことには耳を傾けようとしない人でしょう。阿川佐和子さんの本、「聞く力」(文春新書)がベストセラーになったのは、今から10年近く前、2012年のことですが、今も売れ続けていることを考えると、他人の話を「聞く」という行為の大切さに多くの人が気づき、かつ飢えているのではないかと思います。
ちなみに「ハコヅメ」はこれから後半を迎え、藤の抱えた秘密が明らかとなり、それを川合も知ることになる予感です。2人の絆は決して薄まることなく、より深まっていくと願っています。
執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
毎日新聞等にコラム連載中
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
放送中の「ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜」。今、毎週楽しみに見ているドラマです。戸田恵梨香さん扮する元エース刑事・藤聖子と、永野芽郁さん演じる新人警察官・川合麻依の二人を軸に、交番勤務の日常が主題になっているのですが、私が一番気に入っているのは、2人の関係性の描かれ方です。縦社会にガチガチに囚われることなく、かといって友達同然の緩すぎるやり取りに終始することもない。硬すぎず、柔らかすぎないバランスが絶妙です。
25日の放送では、交通事故のあまりに辛い現場に遭遇した川合が、精神的に大きなショックを受け、仕事を続けることができなくなります。どうやら藤には、過去に同僚警官との間に辛い経験があるようで、そのこともあってか?普段から飛びきり可愛がっている川合をどう励ましてやればいいのか、大いに迷うのです。そこがとてもリアルでした。ドラマをまだご覧になっておられない方もいらっしゃるでしょうから、その先の展開は細かくは控えておきますが、仲間たちの、川合をそして藤を思う気持ちが実を結び、いい方向へと導かれていくのです。
他人を励ましたり助言したりする際、時として自らの思いを半ば強引に押し付けるタイプの方がいます。いわば「親切の押し売り」とでも申しましょうか。さほど相手が聞きたいとは思ってはいない自身の経験談を長々と語り、「だから君も大丈夫!」と、話をまとめます。気持ちが軽くなっているのは、悩んでいる当事者ではなく、アドバイスしている方というケースも実は少なくないかもしれません。
少しだけ話を拡げますが、今世の中に加速度的に増えているのは、自らに都合の良いことばかりを主張し、不利益なことには耳を傾けようとしない人でしょう。阿川佐和子さんの本、「聞く力」(文春新書)がベストセラーになったのは、今から10年近く前、2012年のことですが、今も売れ続けていることを考えると、他人の話を「聞く」という行為の大切さに多くの人が気づき、かつ飢えているのではないかと思います。
ちなみに「ハコヅメ」はこれから後半を迎え、藤の抱えた秘密が明らかとなり、それを川合も知ることになる予感です。2人の絆は決して薄まることなく、より深まっていくと願っています。
執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
毎日新聞等にコラム連載中
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
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