解説者・桂 朋生に聞く! 『鳥人間コンテスト』を120%おもしろく視聴するポイントはコレだ!

2022.08.29

解説者・桂 朋生に聞く! 『鳥人間コンテスト』を120%おもしろく視聴するポイントはコレだ!
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7月23日(土)・24日(日)に開催され、有観客開催という“本来の姿”で完全復活を果たした『Iwataniスペシャル 鳥人間コンテスト2022』。(2022年8月31日(水)夜19時〜21時放送 読売テレビ・日本テレビ系全国ネット)昨年は複数のチームが新型コロナウイルスの影響で出場が叶わなかったが、今年は有力チームが続々と復活。6年ぶりの優勝を目指すレジェンドチームも復活し、レベルの高い熾烈な戦いが繰り広げられ、素晴らしい新記録も誕生した。
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MCのナインティナイン・矢部浩之、実況の羽鳥慎一ら出演者も大興奮した今大会。「読みテレ」では、元東北大学Windnauts機体設計担当、昨年から特設スタジオにて解説を行う桂 朋生さんに、感動の大会をさらに楽しく、深く視聴するためのポイントを聞いた。
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解説を務める桂朋生さん。「桂ァ!今何キロ!?」の桂さん。
読みテレ:昨年は無観客の中の初解説でしたが、今年は有観客で、選手として出場していた時のような状況に戻りました。

桂:この『鳥人間コンテスト』って、選手からすれば競技でもあり、お披露目の場でもあるんですよね。ピカピカに造ってきた機体を見せることが出来てさらに歓声を送ってもらえるのは、すごくモチベーションアップになります。小学生が、夏休みの工作をうまく作れたら見てほしいのと一緒で、僕らも童心というかそういう気持ちがあるので、テレビ放送でだけでなく現地で観客の皆さんに実際の姿を見てもらえるというのはとても嬉しいですね。チームにとってもすごく誇らしい気持ちになる。やっぱり有観客っていうのはいいです!

読みテレ:あらためて、大会を振り返った感想をお聞かせください。

桂:私も見ていて正直怖くなるような風が吹く事もありましたが、どのチームもしっかり機体を作られていて大きな事故などもありませんでした。基礎的なところがしっかりできていて、どんどん全体のレベルが高くなっているなと感じました。滑空機って理屈でいうと300m台が限界の飛距離のはずなのですが、風を横方向に使い、ヨットのように飛ぶ理想的なフライトができることによって、400・500m台という記録が生まれるんです。どこのチームも、そういう記録を狙える時代に来たんだなとうれしく思います。
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読みテレ:確かに向かい風のおかげで波乱が起きたとも言えますね。そもそも向かい風、追い風、それとも無風、どれがベストコンディションと言えるのでしょうか?

桂:無風、もしくは少しの追い風1mほどが滑空機には理想的です。100mを目指しているチームにとっては向かい風2mほどで機体が“浮かぶ”方がうれしいですが、300m以上をクリアした経験のあるチームにとっては、追い風がないと記録は狙えません。だからと言って追い風が強すぎてもダメで、難しいところですね。

読みテレ:風って目視できるものではないですが、パイロットたちは風をどう読んでいるのでしょうか?

桂:経験のあるチームは、手持ちの風速計で風を測定していますし、飛ばす前の段階でこうなったらこうするというのを、全て準備しています。なので、どんな風が吹いても「どうしよう」とその場で考えることは、強いチームは基本的にありません。また、経験のあるパイロットは待機中にほかの機体のプラットホーム上の状態を見て、「これはこうしたらダメだね」といったことを判断しています。なので、放送には映っていませんがプラットホームに上がるまででもチームの強弱は現れたりしています。
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読みテレ:飛行機について詳しくない視聴者が、飛ぶ前に強いチームがわかるポイントはあるのでしょうか?

桂:飛行機の出来が、パッと見て「キレイ」と思えることですね。「キレイ」というのは、機体の直角がしっかり出ていたり、表面が波打ったりへこんでいないなど、簡単にいうと「固そうに見える機体」と感じられること。滑空機の機体は発泡スチロールで造っていますが、それを忘れさせてくれるほど美しい、金属のように見えるような機体であることが大事。
そういう意味で「チームあざみ野」は、群を抜いてバシッと美しさが際立っていました。  
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桂さん絶賛のチームあざみ野の機体
読みテレ:機体の美しさが重要なんですね。では、プラットホーム上で視聴者が注目すべきポイントはありますか?

桂:下にいる段階で、湖面の様子、旗の揺れ方などをチェックして可能な限り琵琶湖のコンディションの情報をチェックしてから、選手たちはプラットホームに上がります。ですので、強いチームほど、プラットホーム上では慌てず、決まった役割をこなしながらゆったり準備をしています。そして必ずパイロットをはじめ何人かが湖面の様子を見ています。

読みテレ:湖面の様子ですか。何のために?

桂:風見役です。プラットホーム上からでしかわからない風の状況が、やはりあるんです。みんながいっぱいいっぱいになって準備に追われ、誰も湖面の風をチェックしていないチームはあまり距離が出ないですね。鳥人間はチームスポーツなので、ビシッと決まった動きをみんなが行なっているチーム、「迷いがないチーム」は強いですね。

読みテレ:プラットホームの上で、飛行機を後ろから押す役の方もいらっしゃいますが、実際どのような役割なのでしょうか?

桂:テレビではただエ~イッと押しているだけのように見えますよね(笑)。飛行機は時速20〜30kmに到達しないと、バランスを崩してフラフラッと落ちてしまうんです。なので、まずその速度に少しでも早く持っていって安定させるという重要な役割を担っているんです。また、もう一つ大事な役割があって、パイロットが操縦できるようになるのは、実は欲しい速度に到達して浮力が効きだしてから。そこまでの間は、両翼を押している人が傾きを、後ろを押している人が頭の高さ・お尻の角度・横方向への動きも操縦しているといっても過言ではないんです。だからこそギリギリまで機体を持っていたいので、時折機体を押しているメンバーがプラットホームから落ちてしまうということが起こってしまうわけです。

読みテレ:押す役が「機体が安定するまでの操縦者」ということなんですね。

桂:そういうことです。だから『鳥人間コンテスト』というのはチームスポーツと言われる所以。単純に力があればいいという訳ではなく湖面のコンディションを読んで飛ばすという重要なポジションなんです。                   

読みテレ:なるほど!では8/31(水)の放送では機体を押す“影の操縦者”にも注目、ですね!
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「機体が安定するまでの操縦者」たち
読みテレ:次に、鳥人間で最も注目されるパイロットですが、機体はパイロットとの相性を考えて設計されるのでしょうか?

桂:「誰が乗っても飛ぶ」という設計もありますが、女性がパイロットで肩幅が狭いから、そのぶんコクピットを細くしたり、どこまでパイロット専用にするかはチームによって変わります。体重が軽い女性パイロットの機体には大きな翼をつけると、全く前に進まなくってしまうので、全体的にスリムで小さな機体にします。機体だけでも勝てない、パイロットだけでも勝てないという点、さらに滑空機で言えば男女差がない、という点も面白いですね。昨年は女性パイロットが優勝しています。

読みテレ:男女差がないというのは今の時代に合っていますね。では、滑空機が飛び立ったあと、パイロットがグッと前に体を出していますが、あれは具体的に何をしているのでしょうか?

桂:飛び立った直後は、まだ本来欲しい速度の20〜30kmには到達していません。一刻も早くその速度を出すために、まずは機体の頭を下げてスピードを出す作業を行います。これができないチームが、プラットホーム近くでフワフワッと落ちてしまうわけです。なので、パイロットが前に重心を動かせるよう、機体の首が長いというのも強いチームの条件の一つ。この作業を、尾翼を動かす操縦桿を使って行うチームもあります。強いチームになればなるほど、スピードを出す動作を一瞬で、そして簡単にやってしまいます。ぜひ注目して欲しいですね。
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読みテレ:桂さん自身が設計に携わっていた時に、機体で一番こだわっていたポイントはありますか?

桂:どこのチームもですが、滑空機はとにかく空気抵抗を減らすことにこだわっています。薄く、長く、翼がどんどんと細長くなっていきます。ゆえに強度を出すことが大変で、作ることがとてもシビアになり、毎年ギリギリの戦いをしています。昔は300mほど飛べば勝てたはずなのですが、今は450mとか飛ばないと勝てなくなってきています。翼の長さ25mという驚異の細長さで、過激になってきていますね(笑)。運搬や琵琶湖での組み立てにも苦労しています。パッと見ると一緒に見えますが、「翼の細長さ」に注視しても強い機体がわかるかもしれません。

読みテレ:昨年から鳥人間で解説を務めていらっしゃいますが、解説をするうえで気をつけているポイントはありますか?

桂:まずは、矢部さんや羽鳥さんをはじめスタジオの出演者の方々と出場者に、もっと距離感があると思っていましたが、全くそうではないのがびっくりしました。テレビではわかりませんが、今何が起こっているのかを積極的に聞いてきてくださったりするので、すごく喋りやすいです。気をつけているポイントというか、私のわかる範囲で、出演者の方々に今の状況をわかりやすく伝えるということに重点を置いています。そうすることで、オンエアでは羽鳥さんをはじめ出演者の皆さんを介して、視聴者のみなさまにポイントが伝わればいいなと思っています。
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読みテレ:スタジオでもチームで戦っていたわけですね。最後に、桂さんにとって鳥人間コンテストとはどういうものなのでしょうか?

桂:東北大学在学中の2010年に初出場を叶えてから、こんなに長く携わるとは思ってなかったですね(笑)。でも今や「ライフワーク」ですね。自分たちで考えたものを実際に形にして、それを距離というわかりやすい数字で競い合う。しかもそれが何十機と集まる。そういう場ってなかなかない、すごく幸せな状況で、おかげさまで物を作るということが自分の軸になりました。最初から最後まで全部自分でやって、それがこの結果です、という仕事ってなかなかないと思うんです。社会人をやっていると調整事の連続ですが、鳥人間が学生時代の頭のシャープさを取り戻させてくれる、自分の中で頭と体をいい意味で尖らさせてくれる、そういうものだなと感じています。



エントリーしたのは「滑空機部門」で15機、「人力プロペラ機部門」で11機。力強いフライトが続出し、奇跡のビッグフライトまで飛び出した今年の『鳥人間コンテスト』。

機体が金属のように美しく見えるか、プラットホーム上で湖面の様子を見ているか、落ち着いて準備しているか、機体の押し役や翼の細長さにも注目して放送を見れば、どのチームが前人未到の記録を叩き出したのか、飛ぶ前にわかるかもしれない。

『Iwataniスペシャル 鳥人間コンテスト2022』は8月31日(水)夜19時〜(読売テレビ・日本テレビ系 全国ネット)で放送される。
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