今年の記録的に早い梅雨明けは“幻”に・・・

2022.09.07

今年の記録的に早い梅雨明けは“幻”に・・・
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9月になると、気象庁は6~8月の天候の振り返りを発表します。

梅雨の入り・明けの発表が「~したとみられる」という【速報値】から【確定値】で結果どうだったかも、ここで振り返ります。

今年の梅雨明けの【速報値】では、6月終わりに九州南部~東北南部にかけて、一斉に記録的に早い梅雨明けの発表があり、ニュースにも大きく取り上げられました。
しかし、9月に発表された【確定値】では約4週間ズレて、やっぱり7月後半でしたとなりました。
北陸・東北地方に関しては、【確定値】で「特定できない」となりました。

ということで、記録的に早い梅雨明けは、幻となりました。

近畿の情報を参考に説明しますと、
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近畿では、梅雨入りは平年より8日遅く6/14でした。
速報値の梅雨明けは6/28。なぜこのタイミングで梅雨明けの発表があったかというと、6月終わりから7月前半に夏の太平洋高気圧が異例の強まりを見せて、連日猛暑が続く予想だったからです。

7月中旬ごろに雨が降り、いわゆる“戻り梅雨”で大雨のリスクがあることは、気象庁も蓬莱も予想していました。僕は解説する際には、「今年の梅雨明けの発表は、条件付き梅雨明けです。まだ大雨のリスクはあります」とお伝えしていました。
ちなみに、梅雨入り・明けの発表は、気象庁が行います。“蓬莱的梅雨明け”みたいなのは、ないんです。。。

だから、苦し紛れに考えたのが「今年は条件付き梅雨明けです」という表現でした。


さて、どうして、気象庁は梅雨明けの【速報値】と【確定値】で大きくズレが出てしまったのか。

①まず、7月中旬の雨に関して、どのくらい続くかの予想が、6/28時点で読みづらいということ。

②6/29以降の気圧配置が、真夏の気圧配置でしかも1週間以上続く予想となっていた。

③梅雨入り・明けの情報を発表する意義は、季節のお知らせだけではなく、「これから出水期なので、備えてください」「これから猛暑の時期なので、熱中症に備えてください」という防災の意味も含まれているということ。


今回は、6月終わりから7月前半の猛暑に対して、真夏の暑さが異例の早さでやってきていることに対しての防災の意味もあったのではないかと考えられます。実際に、6月で初めて40℃超の所が観測されました。
まず目先の猛暑に対して、警戒の意味も含めて、梅雨明けの発表をせざるを得なかったのではないかと個人的に思います。気圧配置も考慮して…。

季節が前に進んでいく先頭の段階で、2週間以上先の天気を正確に予想し「きょうから夏です」とズバッと線を引くのは、今の技術では困難です。実際の季節は、3歩進んで2歩下がるといった具合に、場合によっては、いきなり5歩進む、3歩進んで6歩下がるということもしながら変化していくものです。
振り返ってみた時に「季節の境目はこの日だった」というのが【確定値】です。
「だったら、もう発表自体をやめたらいいんじゃないか」という意見もあるかもしれませんが、【確定値】は統計データに残します。過去の統計データは現状・未来を知るために必要なものなんです。
そのためにも70年以上、梅雨入り・明けの発表は行われ続けています。

70年間、どの時代の気象関係者も一般の皆さんからお叱りの声をいただいたり、納得いかないという声を聞いて肩身の狭い思いをする。時に、天気予報ってこういうもんだと開き直る。

それが、梅雨入り・明けの情報です。
プロフィール
蓬莱大介(ほうらい・だいすけ)
気象予報士・防災士。健康気象アドバイザーと熱中症対策アドバイザーの資格を持つ。
1982年兵庫県明石市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2011年読売テレビ気象キャスター就任。 現在、読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」「かんさい情報ネットten.」「ウェークアップ」にレギュラー出演中。読売新聞(全国版)で連載記事「空を見上げて」を執筆。
著書 「クレヨン天気ずかん」(2016年主婦と生活社)
「空がおしえてくれること」(2019年 幻冬舎)
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