札幌?東京?マラソン開催地以上に大切なこと
2019.10.31
2020年東京オリンピックのマラソン、競歩の開催地を巡っては混乱が続いていましたが、10月30日~11月1日に都内で開催されているIOC調整委員会を経て、どうやら札幌開催が大筋で決定、発表がなされそうな風向きです。ただし、費用負担やコースの選定など問題は山積してます。そのあたりも含め、どの程度調整委員会で合意に至ることができるのか、注目されるところでしょう。
いずれにせよ、来年東京を中心とした日本でオリンピックが開催されることは、覆ることのない事実です。開催されるからには、日本のみならず世界中の人々が満足するに足る、素晴らしいオリンピックになって欲しいと心から願っています。日本チームの活躍が大きな追い風となり、ラグビーワールドカップがこの上なく盛り上がった感動の場面の数々が、私たちの心に強くインプットされただけに、余計そう思います。
さて、いつもの「ウエストサイドTV」に比べ、今回は、やや硬めの書き出しになってしまいました。ここからが本題です。マラソン開催地を「東京」とするか、「札幌」とするか、どちらに賛成するかについて、いち早く世論調査を行い、報道したのは、産経新聞・FNNでした。記事を一部引用します。
≪北海道ブロックでは「札幌」の回答が62.5%で「東京」の25.9%を大きく上回った。東北ブロックでも「札幌」との回答が51.6%と「東京」の39.6%より多かった。
一方、東京ブロックでは「東京」との回答は、49.1%で、「札幌」との回答は39.4%だった。「東京」が「札幌」を上回ったのは東京と九州ブロックのみ。(中略)猛暑対策として、会場を札幌に移すことに一定の理解が進んでいるようだ。≫10月22日付産経新聞朝刊
東京ブロックの結果はよく理解できますが、九州ブロックの「東京」支持が興味深いところです。また調べてみたい案件です。
後日、今度は毎日新聞が調査を行いました。再び記事を引用します。
≪マラソンと競歩の会場を札幌市に移す案を「支持しない」は47%で、「支持する」の35%を上回った。無回答も18%あった。≫10月28日付毎日新聞朝刊
産経新聞に比べて、毎日新聞の場合は、調査対象者をブロックに分けて発表してはいませんが、二つの調査において、逆の傾向が出たと言えるでしょう。
興味深いのは、東京都が10月22、23日に20歳以上の都民を対象にインターネット調査を行った結果です。2060人が回答していますが、「札幌変更案」に賛成が、732人(35.5%)、「反対」が、658人(32.0%)「どちらでもない」が、670人(32.5%)という結果でした。まさに拮抗という様相ですが、わずかに「札幌」が上回ったデータがでています。ただ一方で、24日までに都に電話やメールで寄せられた意見では、49件(11.8%)が札幌支持、368件(88.2%)が東京支持だとのことです。
「選手ファースト」、「都民ファースト」など、さまざまな「ファースト」が声高に叫ばれます。ですが、一番大切なのは、自らと違う意見を唱える人々に対して、感情的にならず、どれだけ聞く耳を持つことができるかということでしょう。こうしたアンケート調査のいくつかをピックアップするだけでも、すぐに「東京!」あるいは、「札幌!」と条件反射的に語ることが適切でないことは明白です。ですが、テレビ番組のいくつかは、いささか度の過ぎた「一方向性」からだけの視点に偏った番組も見られます。多くの視聴者たちがさまざまなメディアに触れることが望ましいことは言うまでもありませんが、忙しさの増す現代社会において、それは中々難しくもあるのが現状です。だからこそメディアは、可能な限り「中立」な報道を心掛けなくてはならないのです。そんなことを「東京」から500キロほど離れた関西から、ツラツラと思っている私なのでありました。
執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
いずれにせよ、来年東京を中心とした日本でオリンピックが開催されることは、覆ることのない事実です。開催されるからには、日本のみならず世界中の人々が満足するに足る、素晴らしいオリンピックになって欲しいと心から願っています。日本チームの活躍が大きな追い風となり、ラグビーワールドカップがこの上なく盛り上がった感動の場面の数々が、私たちの心に強くインプットされただけに、余計そう思います。
さて、いつもの「ウエストサイドTV」に比べ、今回は、やや硬めの書き出しになってしまいました。ここからが本題です。マラソン開催地を「東京」とするか、「札幌」とするか、どちらに賛成するかについて、いち早く世論調査を行い、報道したのは、産経新聞・FNNでした。記事を一部引用します。
≪北海道ブロックでは「札幌」の回答が62.5%で「東京」の25.9%を大きく上回った。東北ブロックでも「札幌」との回答が51.6%と「東京」の39.6%より多かった。
一方、東京ブロックでは「東京」との回答は、49.1%で、「札幌」との回答は39.4%だった。「東京」が「札幌」を上回ったのは東京と九州ブロックのみ。(中略)猛暑対策として、会場を札幌に移すことに一定の理解が進んでいるようだ。≫10月22日付産経新聞朝刊
東京ブロックの結果はよく理解できますが、九州ブロックの「東京」支持が興味深いところです。また調べてみたい案件です。
後日、今度は毎日新聞が調査を行いました。再び記事を引用します。
≪マラソンと競歩の会場を札幌市に移す案を「支持しない」は47%で、「支持する」の35%を上回った。無回答も18%あった。≫10月28日付毎日新聞朝刊
産経新聞に比べて、毎日新聞の場合は、調査対象者をブロックに分けて発表してはいませんが、二つの調査において、逆の傾向が出たと言えるでしょう。
興味深いのは、東京都が10月22、23日に20歳以上の都民を対象にインターネット調査を行った結果です。2060人が回答していますが、「札幌変更案」に賛成が、732人(35.5%)、「反対」が、658人(32.0%)「どちらでもない」が、670人(32.5%)という結果でした。まさに拮抗という様相ですが、わずかに「札幌」が上回ったデータがでています。ただ一方で、24日までに都に電話やメールで寄せられた意見では、49件(11.8%)が札幌支持、368件(88.2%)が東京支持だとのことです。
「選手ファースト」、「都民ファースト」など、さまざまな「ファースト」が声高に叫ばれます。ですが、一番大切なのは、自らと違う意見を唱える人々に対して、感情的にならず、どれだけ聞く耳を持つことができるかということでしょう。こうしたアンケート調査のいくつかをピックアップするだけでも、すぐに「東京!」あるいは、「札幌!」と条件反射的に語ることが適切でないことは明白です。ですが、テレビ番組のいくつかは、いささか度の過ぎた「一方向性」からだけの視点に偏った番組も見られます。多くの視聴者たちがさまざまなメディアに触れることが望ましいことは言うまでもありませんが、忙しさの増す現代社会において、それは中々難しくもあるのが現状です。だからこそメディアは、可能な限り「中立」な報道を心掛けなくてはならないのです。そんなことを「東京」から500キロほど離れた関西から、ツラツラと思っている私なのでありました。
執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
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