日本人はランキングバカになってる?ケンコバ&ハライチがあらゆる順位を大調査する番組に隠された意図とは

2022.03.15

日本人はランキングバカになってる?ケンコバ&ハライチがあらゆる順位を大調査する番組に隠された意図とは
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日本人は無類のランキング好きと言われている。人気企業、都道府県の魅力度、商品の売れ行き、芸能人も様々なランキングがつけられ、話題になっている。日本人のランキング好きの理由は、世間の評価に任せて「自分の軸がないから」と指摘する声もあるが、裏を返せば、老若男女が一致する価値を認めているからだとも言える。

だったら、それを楽しんでみよう! そんな番組が注目を集めている。ケンドーコバヤシ&ハライチがMCを務め、森羅万象、一風変わった未知なるランキングを全力調査している『らんきんぐバカ』(読売テレビ2022年3月20・27日(日)12時35分~)だ。どうして日本人はランキングを語りたがるのだろうか? この番組を企画・演出した金井南燮(なんしょう)プロデューサーに聞いてみた。

話題はランキングから数字=視聴率へと及び、テレビの変化についても語ってくれた。

【企画 : 藤生朋子 / 取材・文 : 鈴木しげき】

ネット検索しても出てこない気になるランキングをテレビで!


――この番組を企画した意図とは?

金井 : 企画自体は8年ほど前に書いたものです。当時『もうチョイ!かま天マーケット』という、かまいたち・天竺鼠・藤崎マーケットの番組を担当していました。その番組ではテレビの定番企画をちょっとズラして、いろいろとやっていたのですが、その中で「もうチョイ!誰も見た事のないランキング」という企画をやりました。その時、「コレだけで特番やれるなぁ」と思って、その後ネタを拡げて何度か企画書にしていったものが今回実現しました。

大枠を「ランキング」という形の番組にしておけば、ちょっと変わった角度の情報やVTRも潜り込ませる事が出来そうというもくろみがあって。実現まで8年かかってしまいましたが(笑)。

――テレビもネットも様々なランキングを発表していますが、なぜ日本人はこんなにランキングが好きなんでしょう?

金井 : 日本人だけに限ったことではないですけど、「順位をつける」ことが人は本能的に好きなのかなぁと思いますね。『らんきんぐバカ』第2回の放送でやりましたが、江戸時代から様々な番付があったりして人間の根源的な欲求を満たすひとつの型のような気がしています。

番組を制作する立場としても“会議あるある”ですが、困ったら「これ、ランキングにして見せよう」といった声がよくあがります。今回の企画は、そういう制作者の潜在的で盲目的な意識をあえて前に出して、ちょっと、そこも皮肉ったような意味合いを込めています。ま、裏テーマですが。

――ランキングそのもので遊んじゃってると?

金井 : 何でもかんでもランキングにしたがるテレビがあって、それなら、こんな変なモノもランキングにしてしまえ、みたいな感じです(笑)。
第1回放送から
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第1回放送から


――番組では「やたら味の種類が多い商品ランキング」「はじめて一緒に行く人とのカラオケ“1曲目にちょうどいい曲”ランキング」など興味のそそられるものを扱ってますよね。扱うランキングは何を意識して?

金井 : ありがたいことに今回は放送が4週連続であるので、ありとあらゆるジャンルのランキングをやろうと考えました。情報性のあるものから、とにかくVTRが笑えるもの、根源的な検証もの……など。世の中がランキングで溢れているので、この番組では【ネット検索しても出てこないもの】をラインナップしました。
第1回放送から
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第1回放送から


今回は全部で100以上の気になるランキングが会議であがりましたが、その中から厳選したものを放送で取り上げています。

――MCのケンコバさん、ハライチのおふたり、ものすごく番組を楽しんでいますよね?

金井 : 収録で一番ビックリしたのが「めちゃくちゃ本気でランキング予想を楽しんでるやん!」ということです。ケンコバさんは博識な知識をもとに独自のコバ理論で予想してくれます。
ハライチ岩井さんも、あの独特の観察眼で結果を予想してくれるんですが、それが実際に当たったりして、ケンコバさんから「おまえは大衆派やな」とイジられたり(笑)。ハライチ澤部さんの予想を斜め上からイジる岩井さんの感じも面白かったですね。
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“数字”も大事だが、制作者が面白いと思って作っているかも大事にしたい


――やはり、みんな“数字”の評価が気になるんですね。ところで、テレビの制作者たちも視聴率は気にしますか?

金井 : もちろん、気にしています。ただ、それだけが絶対的な評価基準じゃなくなってきていて、「この層に刺さればOK」「配信で回ればOK」みたいな様々な評価基準が混在してきています。テレビ局が各番組に対して明確な指標を持てればいいんですが、今はまだ、そこを探り探りやっている感じがしています。

――テレビが変貌している時期なんですね。

金井 : 視聴率を意識するのはもちろん大事ですが、ずっとそこだけを指標にしてきて「自分たちが面白いと思うもの」よりも「視聴者が見てしまうだろうな」というものを意識して番組作りをしてきた結果、オンデマンドでコンテンツを選ぶ時代に生き残っていけるのかなぁと危惧する気持ちはあります。

特にYTVは「流れていたら観たくなる番組」を作るのは上手いけど、「キチンと選択して観てもらう番組」はあまり作ってこなかったかも、みたいな感覚が個人的にあって。もちろん前者の番組はこれからも必要ですが、後者の番組を作れる制作者がいないと前に進めないのでは、と感じています。

能動的に視聴者に選んでもらうためにコンテンツを作る時代に突入しているので、もっと「作り手の味」がする番組と言いますか。今回のこの番組も、そこは意識して制作したつもりです。もちろん、大ハズレする可能性もあるのですが(笑)。

――確かにわたしたち視聴者は多様なコンテンツから選ぶ時代になりました。その変化にあわせて制作する上での具体的な変化というと?

金井 : 今までの経験では「とにかく分かりやすく」「知らない人にも伝わるように」というのが大原則でしたが、そこも揺らいできている気がしています。過剰に説明することで面白さが損なわれたりする場面は結構あるので、どのラインに合わせるのか。もちろん公共の電波なのでキチンと伝わらなければいけないという前提はあるので、そこの基準は日々調整しながらやっています。

テレビ局なので、まだまだ第1次の発信は地上波になりますが、この『らんきんぐバカ』も土日の関西でのお昼の放送があってるのかはよく分かりません(笑)。

視聴環境がどんどんオンデマンドに変化していっている中、大事なのは、放送する時間帯に関係なく「自分たちが面白いと思って作れているか」「出演者も面白いと思って番組に臨んでくれているか」が先にあって、その上で「この時間帯の視聴者にどうやったら見てもらえるか」という順番でモノを作りたいなと個人的には思っています。

――最後に『らんきんぐバカ』のココを楽しんでほしい! というのがあれば。

金井 : ケンコバさんが収録後の取材で「人生で別に知らなくてもいい知識を教えてもらえるのはありがたい」と言ってたんですが、まさにその通りだなと思いましたね。人間は知りたい生き物で、その根源的な欲求を満たす多種多様なランキングをお届けしているのが、この番組です。

どのVTRも結果を予想しながら楽しめる作りになっているので、気楽に見てくださるとうれしいです。よくあるランキング番組ではありませんので(笑)、きっと何かがあなたに刺さると思います。いっけん刺さらないランキングもいろいろ味付けしたVTRになっているので毛嫌いせず、見ていただきたいです。

あとはケンコバさんとハライチさんの師弟関係によるトークもエモーショナルで最高に楽しめます。ぜひ!
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【金井南燮 プロフィール】
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【金井南燮 プロフィール】

2006年、読売テレビ放送入社。大阪本社制作・東京制作に合わせて15年所属。『鳥人間コンテスト』『漫才Lovers』『あさパラ!』『ダウンタウンDX』『OWARAIブラックジャック』等を担当。 2020年よりytv Nextry東京制作センターへ出向し、現在は『ダウンタウンDX』プロデューサー/『らんきんぐバカ』演出兼プロデューサー等を担当している。
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