読売テレビアナウンサー・佐藤佳奈のとれたてリサーチ 【素朴な疑問】「AランクよりSランクが上」の定着にひと役買ったあの人気マンガ

2023.02.10

Aランクの上が「Sランク」なのはナゼ?/す・またん!

読売テレビの佐藤佳奈アナウンサーが【今さらひとに聞けない素朴な疑問】を全力リサーチ! 今回は「Aランクの上がSランクなのはナゼ?」。

Jリーグや日本代表の監督を務めるには日本サッカー協会の「S級ライセンス」が必要。ゲームなどの中古品もいちばん状態が悪いものからD→C→B→A→Sランクになる。勉強の成績もAよりSが上。

でも、じつはこれ、日本特有の文化なんだとか。海外ではアルファベットのいちばん最初が「A」なので、あくまでも「最高ランクはA」という考え方が一般的。じゃあ、何で日本では「S」がいちばん上なのか。
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近畿大学の石井隆之教授によれば、Sの意味に明確な決まりはないが、「スペシャル」が最も近いと考えられる。
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日本では1900年代から序列の最上位に「特急」や「特等」を設ける傾向があり、例えば技能士などの資格は「3級」「2級」「1級」「特急」で、劇場や鉄道の座席も「特等」や「特別席」があった。
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そこで、英語で「特別」などの意味を持つ「スペシャル」表記が発生したのではないか。1910年頃には外国人向けの鉄道車両で「特等SPECIALクラス」などの表記が現れ始めた可能性があるそう。

では、「スペシャル」表記が「S」に省略されたのは?

じつは今から100年近く前、1925年(大正14年)には「Sランク」が存在していたことが判明。当時の中古カメラの広告を見ると「S」の文字がある。商品の状態を表すランクとして「Sは新品同様で、ABCの順です」と説明がされている。
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その後、1971年には伝説的ロックバンド「レッドツェッペリン」が初来日公演を行い、その時にも「A席」より高価な席として「S席」が用意されていた。
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ただ、この頃はまだA級の上を「超A級」だったり「特A級」とすることもあったそう。今のように「Sランク」が一般的になったのは?

石井教授によれば、「定着したのはマンガの影響が大きいと思う」とのこと。

例えば1989年に年に連載が始まった『スプリガン』。発行部数1000万部を超える人気マンガだが、この主人公が「A級工作員」よりも優秀な「S級工作員」。そこにはきちんと「スペシャル工作員」とルビが降られている。

さらに1990年に連載が始まった『幽☆遊☆白書』にも敵対する妖怪に「S級」がいた。苦戦した妖怪の戸愚呂(とぐろ)がB級妖怪だったことが判明し、「えっ、それよりも強いA級とS級がいるの!?」と主人公や読者に衝撃を与える展開があったのだ。
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こういった人気マンガも「S」=「最高ランク」の定着にひと役買ったようだ。
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英語の「Super(スーパー)」の意味は日本語で「素晴らしい」。英語の「Supreme(スプリーム)」は日本語で「最高」。石井教授によれば、このように「素晴らしい」「最高」「最上級」を表す言葉は「S」で始まるものは多いんだとか。日本人にとってアルファベットの中で最も特別感をもたらす文字が「S」なのだ。

【文:井出尚志】
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