『終わりが始まり』読売&中京タッグの面白さ。

2023.02.28

『終わりが始まり』読売&中京タッグの面白さ。
©ytv
2月25日に放送されたスペシャル番組、この後どうする?密着TV『終わりが始まり』(読売テレビ・中京テレビ制作)が面白かったです。

加藤浩次さんをMCとしたドキュメンタリーバラエティだったのですが、コンセプトがとても興味深かったのです。さまざまなジャンルでの「終わり」を起点にして、その後を追いかけるという企画でしたが、2時間見入ってしまいました。まだ見逃し配信で視聴できるはずなので、詳しくは申し上げませんが、取材対象は、巨大サーカス団、北九州市の成人式、マグロ遠洋漁業、人気アイドルグループの推しメンバー卒業を取材ディレクターたちが密着していたのです。

取材の丁寧さ、そして大仰に感動を呼びこもうとしないスタッフの姿勢に好感を持ちました。テレビはとかく感動を上乗せしたがるものです。でもそれは時として、嘘臭さや白々しさを増幅しがちにもなります。そのあたりを抑えた、塩梅の絶妙な番組でした。
 
視聴者のみなさんはあまりピンと来られないかもしれませんが、系列局の仲間である、読売テレビと中京テレビが共同で制作していたのも、興味深いポイントでした。互いに切磋琢磨していいものを作ろうとしている姿勢が垣間見られて、とても清々しかったのです。仲間とは言え、当たり前ですが互いに全く別の会社ですし、読売テレビは大阪市に本社があり、中京テレビは名古屋市に本社があるテレビ局なのです。同じ仕事をしていても、実は制作の手法を始め、いろいろと違いがあるものなのです。きっとそれなりのご苦労はあったかと思うのですが、それを乗り越え魅力あふれる番組に仕上げられていました。

実は両局は、毎週日曜放送の「気になる情報のウラのウラ 上沼・高田のクギズケ!」でも共同制作を行っています。上沼恵美子さんと高田純次さんの掛け合いの面白さが光る情報バラエティ番組です。もちろん、こうした例は他の系列でもないことはありませんが、実はあまり頻繁にあるケースではありません。こうした事例があることで、今回の「終わりが始まり」の成功を導いたともいえるでしょう。

普段視聴者のみなさんがご覧になっている番組の制作局は、東京のテレビ局のものが多いかもしれません。ですが制作する局によって、実はそれぞれにカラーがあるものなのです。近年はそうした色合いの違いも若干薄れてきた部分もあるかもしれませんが、まだまだそれぞれの局の個性はしっかりあるように思います。そんな違いをチェックしながら見るのもテレビの楽しみのひとつかもしれませんね。
 

執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
毎日新聞等にコラム連載中
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など
この記事を共有する

新着記事

新着記事一覧へ

アクセスランキング