台風は「縦断」?「横断」?
2018.08.23
今回から「読みテレ」に『ことばのことばかり』というシリーズで原稿を書かせてもらうことになりました、読売テレビの道浦俊彦です。 1984年にアナウンサーとして入社して35年目。現在は報道局で「情報ライブ ミヤネ屋」を担当。原稿やテロップなどの文字や表現のチェックという「校閲」のほか「吹き替え」もやっています。
読売テレビのホームページ(ブログ)では1999年7月から19年間、言葉のコラムを書き続けています。その間に書いたコラムが「7000回」近くになっています。どうぞ、よろしくお願いします。
さて、「読みテレ」では「テレビと言葉」について気付いたことを書けというお達しなのですが、今回はこれにしました。「縦断と横断」。
例年になく日本列島を襲う台風が多い今年。この台風は、日本列島を「縦断」するのか?「横断」するのか?という問題です。毎年台風シーズンになると悩むんですよね。 原則は、その進路の方向が「南→北」なら「縦断」、「西→東」なら「横断」です。
去年7月の「台風3号」の進路は「西→東」へ「ほぼ真横=緯度線と並行」だったので、「横断」で「ミヤネ屋」では放送したのです。ところが、日本テレビ「スッキリ!!」では「縦断」だったのです。フジテレビの「とくダネ!」では「ミヤネ屋」と同じ「横断」で、新聞のラ・テ欄は、各局まちまちでした。
2015年7月の「台風11号」も、日本テレビ「news every.」で、「西日本を縦断した台風11号」と「縦断」で放送したところ、視聴者から、「横断ではないか?」というご指摘がありました。「台風11号」が通る予想コースは、「太平洋側の四国か和歌山県から、岡山~鳥取・島根へ抜けるコース」だったので、九州や東海・関東・東北・北海道は、あまり関係なく、「日本列島全てを串刺し=縦断」というイメージよりは、「日本列島の一部=本州の距離の短い所を太平洋側から日本海側へ『横断』」とする方が良いと思い、「ミヤネ屋」では一貫して、「横断」で放送しました。「“横断”歩道」のような感覚です。でも、「南→北」のコースは「縦」ですから、「縦断」も間違いではないような気もします。
実は気象庁のホームページには「縦断・横断」に関する説明があります。
それによると、
「一般には、横または東西の方向に横切ることを『横断』、縦または南北の方向に通り抜けることを『縦断』と言う。日本列島は弓なりに彎曲しており、地域によっては違和感を生ずる場合がある。『横断』『縦断』を用いる場合は、利用者が混乱しないように留意し、必要に応じて台風の上陸地点、通過地域、方向などを具体的に示す。」
と記されていました。ということは、「これが絶対正解」というものはないのかな。
そもそも「縦」か「横」かというのは、とても「相対的な感覚」ですよね。
「縦断」にせよ「横断」にせよ、できるだけ被害が少ないに越したことはありませんね。
(文:道浦 俊彦)
【執筆者プロフィール】
道浦 俊彦(みちうら・としひこ)
1961年三重県生まれ。1984年読売テレビにアナウンサーとして入社。現在は報道局専門部長で『情報ライブ ミヤネ屋』でテロップや原稿のチェックを担当するかたわら、98年から日本新聞協会新聞用語懇談会委員。著書に『「ことばの雑学」放送局』(PHP文庫)、『スープのさめない距離~辞書に載らない言い回し56』(小学館)、『最新!平成ことば事情』(ぎょうせい)など。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)では2006年版から「日本語事情」の項目を執筆している。読売テレビのホームページ上でブログ「平成ことば事情」「道浦俊彦の読書日記」を連載中。趣味は男声合唱、読書、テニス、サッカー、飲酒(ワイン他)など。スペイン好き。
さて、「読みテレ」では「テレビと言葉」について気付いたことを書けというお達しなのですが、今回はこれにしました。「縦断と横断」。
例年になく日本列島を襲う台風が多い今年。この台風は、日本列島を「縦断」するのか?「横断」するのか?という問題です。毎年台風シーズンになると悩むんですよね。 原則は、その進路の方向が「南→北」なら「縦断」、「西→東」なら「横断」です。
去年7月の「台風3号」の進路は「西→東」へ「ほぼ真横=緯度線と並行」だったので、「横断」で「ミヤネ屋」では放送したのです。ところが、日本テレビ「スッキリ!!」では「縦断」だったのです。フジテレビの「とくダネ!」では「ミヤネ屋」と同じ「横断」で、新聞のラ・テ欄は、各局まちまちでした。
2015年7月の「台風11号」も、日本テレビ「news every.」で、「西日本を縦断した台風11号」と「縦断」で放送したところ、視聴者から、「横断ではないか?」というご指摘がありました。「台風11号」が通る予想コースは、「太平洋側の四国か和歌山県から、岡山~鳥取・島根へ抜けるコース」だったので、九州や東海・関東・東北・北海道は、あまり関係なく、「日本列島全てを串刺し=縦断」というイメージよりは、「日本列島の一部=本州の距離の短い所を太平洋側から日本海側へ『横断』」とする方が良いと思い、「ミヤネ屋」では一貫して、「横断」で放送しました。「“横断”歩道」のような感覚です。でも、「南→北」のコースは「縦」ですから、「縦断」も間違いではないような気もします。
実は気象庁のホームページには「縦断・横断」に関する説明があります。
それによると、
「一般には、横または東西の方向に横切ることを『横断』、縦または南北の方向に通り抜けることを『縦断』と言う。日本列島は弓なりに彎曲しており、地域によっては違和感を生ずる場合がある。『横断』『縦断』を用いる場合は、利用者が混乱しないように留意し、必要に応じて台風の上陸地点、通過地域、方向などを具体的に示す。」
と記されていました。ということは、「これが絶対正解」というものはないのかな。
そもそも「縦」か「横」かというのは、とても「相対的な感覚」ですよね。
「縦断」にせよ「横断」にせよ、できるだけ被害が少ないに越したことはありませんね。
(文:道浦 俊彦)
【執筆者プロフィール】
道浦 俊彦(みちうら・としひこ)
1961年三重県生まれ。1984年読売テレビにアナウンサーとして入社。現在は報道局専門部長で『情報ライブ ミヤネ屋』でテロップや原稿のチェックを担当するかたわら、98年から日本新聞協会新聞用語懇談会委員。著書に『「ことばの雑学」放送局』(PHP文庫)、『スープのさめない距離~辞書に載らない言い回し56』(小学館)、『最新!平成ことば事情』(ぎょうせい)など。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)では2006年版から「日本語事情」の項目を執筆している。読売テレビのホームページ上でブログ「平成ことば事情」「道浦俊彦の読書日記」を連載中。趣味は男声合唱、読書、テニス、サッカー、飲酒(ワイン他)など。スペイン好き。
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