コロナ禍での私権制限はありか?なしか?「法と人権」敏腕弁護士大集合SP

2021.10.11

法と人権を徹底討論!敏腕弁護士大集合SP(全編公開)【そこまで言って委員会NP|2021年10月3日放送】

「人権」という言葉がこれほどリアルに取り沙汰される時代もないだろう。ジェンダー平等や、様々な差別の問題などが浮上し、人権は守られるべきと当たり前のように思っていたことがあらためて問われている。

10月3日放送の「そこまで言って委員会NP」では、ズバリ「法と人権」をテーマに敏腕弁護士が大集合し、わかってたはずでわかってなかった人権の問題を議論した。いつにも増して硬派で濃い内容となった。

コロナ禍では人々の行動の抑制が求められたが、日本ではロックダウンが法的にできないと言われた。だが一部の国々のように国民の外出を法的に規制することは必要なのか?

そこで番組から出演者へ質問。「私権制限を可能にする法整備はすべきか、すべきでないか」論客たちの回答は真っ二つに分かれた。

何度も名前を「木村さん」と呼ばれ、その度に「コラー!本村だよ!」と芸人ばりに返す弁護士・本村健太郎氏は「私権制限という言葉の意味が不明解だ」と切り出した。
「そもそも法律とは私権を制限するもの。コロナ禍の議論での私権制限とは、過去に例がないくらいの強力な制限という意味だろう」と前提を共有すべきだと主張。
同じく弁護士・紀藤正樹氏も定義の曖昧さについて本村氏に同調しながら、
「飲食店でも自粛を守ってないお店がたくさんある中で、外出制限が何らかの制裁付きでできるのか」と法による制限に疑問を突きつけた。
田嶋陽子氏も「法整備すべきでない」側。「ニュージーランドの首相を自分は絶賛していたが、私権制限も含めて対策をきちんとやったのに、結局感染者は日本の方が少なかった。私権制限をしなくても、日本のだらだらしたやり方でいいのかなと思った。」
ジャーナリスト・門田隆将氏は「優先すべきは国民の命」として、法整備をすべきだと真っ向反論。
「首相や知事が協力してくださいと言っても病床が確保されなかったこの1年半を見て、キャパのある病院には強制性を持てる体制を作らないと、次にものすごい波がやってきた場合に危ない。」今後のことを思うと、説得力ある意見だ。
だが本村氏が猛反論。「いざ緊急事態という時に、どんな命令でも下すことができる、憲法の例外を認めてしまうのは非常に危ない。憲法の存在意味がなくなってしまう。」
門田氏は引き下がらない。
「戦争・災害・疫病、そのとき国民の命を守るために国家はどうあるべきかを考えてほしい。」
本村氏も負けてはいない。「政府がきちんとしたことをやってくれる信頼があるならそれも可能。ただそれが信用できないから、憲法がある。
そこへ作家・竹田恒泰が割って入る。
「例えばいきなりどこかの国から攻め込まれた時も緊急事態条項があれば、こういう時はこうしなきゃとか書いておくわけだから、だから木村さんは・・・」と、本村の名前を間違うお約束は忘れないのがえらい。
本村は「コラー!」と返しつつ「例えば本当に攻撃された場合とか、極端な場合を想定して憲法を改正するのは一案かもしれない。ただ、コロナの感染拡大まで戦争と同列に緊急事態条項に入れてしまうと危険ではないか。」と落ち着いて反論した。
紀藤氏が同調してこう言う。「緊急事態条項というのは、行政が何でもやってもいいという発想。戦前の国民徴用令では、国民の仕事を国が勝手に決めていた。行政がそんなことをやっていいのかの議論は当然ありうる。安倍首相は緊急事態宣言を出す前に、2月の段階で全国の学校に登校の自粛を要請した。ああいうことが緊急事態条項だったらありうる。今から考えるとハレーションだった。」
一方、国際弁護士・八代英輝氏は「法整備をすべき」の立場でこう言った。
「(阪神・淡路)大震災のとき、自衛隊は本来知事の出動要請がないと動けないが辞職を覚悟して出動した。大きなハードルになったのが私有財産の壁で、私有地に入ってご遺体を捜索することは自衛隊に認められてない。(※その後これを教訓に自衛隊法が改正された) 私有財産は戦後、非常に強力に保護されるようになったが、非常時に備えてきちっと法律整備しておくべき。
最後に議長・黒木千晶アナが小倉智昭氏に振ると
「日本政府は今回の感染症で特別措置法などをやってきて、やろうと思えば憲法改正しなくても私権制限はできたはず。ただ、それをやるなら補償をセットにしなければいけないから、できなかったのだと思う。政府が補償しきれてないのはわかっている。ここでもし憲法改正をやろうとしたら、どこまで利用されるかわからないぞという声が一斉に国民から巻き起こる。だから今は政府もじっと我慢なんじゃないかと思う。」
なるほどという見方を示してこの議論をまとめた。

このあと、少年法と成人年齢についてや、死刑制度の是非までハラハラする議論が展開された。「法と人権」について、論客たちの意見を参考にあなたも考えてみてはどうだろう?

【文:境 治】
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