今回の配達先は、群馬県。アロマ蒸留家で調香師の長壁早也花さん(34)へ、大阪府で暮らす母・恭子さん(64)、兄・瞬さん(39)が届けたおもいとは―。
みなかみ町で100%天然成分の「精油」の蒸留から販売までを手掛ける
早也花さんが暮らすみなかみ町は、面積の約9割が山林という自然あふれる地域で、谷川温泉など「みなかみ18湯」と呼ばれる温泉郷がある観光地としても人気の町。その観光エリアの一角で、早也花さんはアロマの専門店「Licca」を営んでいる。
店に並ぶのは、「精油」と呼ばれるエッセンシャルオイル。精油は、スギやヒノキなどの植物から抽出した100%天然成分のオイルで、主にルームフレグランスとして使用されている。
一方、早也花さんはオイルの蒸留も手掛けていて、自宅に設けた蒸留所では夫の総一郎さん(37)とともに、山で伐採した樹木などからオイルを抽出。このように蒸留から販売までを行うアロマ専門店は全国でも珍しいのだそう。
ある日は、アブラチャン、アカマツ、スギ、ユズを蒸留し、オイルを抽出することに。アブラチャンは全国の山に自生する落葉樹で、地元の人に香りがいいからと勧められ蒸留に挑戦した樹木。そして早也花さんが全国で初めてエッセンシャルオイルとして売り出したそうで、レモン系、スペアミント系、ローズ系の香りと樹木が混ざったような香りがするという。
そんな植物を材料に、自作の蒸留器を使い地道な作業で精油を抽出していくが、外気温が低い冬は1日8時間の蒸留が精いっぱい。しかも完成した精油は、一番多いアカマツで約70ml、アブラチャンにいたってはわずか約9mlだった。価格は抽出量が少ない分、どうしても高価になってしまうという。
青年海外協力隊としてラオスに赴任するも…母がくれた精油が人生を大きく変える
中学生の頃から海外に興味があった早也花さんは、大学卒業後、JICAに応募。青年海外協力隊としてラオスへ渡った。だが、ピアノ指導者の資格を活かして赴任したものの、待っていたのは思い描いていた理想とはかけ離れた現実。そのギャップに悩まされた早也花さんはストレスで不眠症になってしまう。
そんなとき、母から届いたのがラベンダーの精油。「寝られないときはラベンダーがいいらしい」と送ってくれたものだったが、これが人生を大きく変えることに。
帰国後、辛い時に助けられた香りを仕事にしたいと、アロマテラピーインストラクターの資格を取得。そして青年海外協力隊で知り合った総一郎さんと結婚し、水がきれいで植物も豊かな、エッセンシャルオイル作りにはもってこいのみなかみ町に移住したのだった。
今はやりたい事を見つけ、充実した日々を送る早也花さんだが、実は家族にも言えず抱えていた思いがあった。21歳の時、ウガンダ留学を決意したものの両親から大反対されたときのこと。まさかの反対に遭ったことで、「誰にも応援されていない」という気持ちが頭をもたげるようになったという。いつも家族の中心にいたのは、スポーツ万能の兄。小さい頃からサッカーで活躍する兄を自慢に思う反面、「ずっと劣等感があったし、自分には何もないと思っていた。だからウガンダを自分の目的にしようとしていたのかもしれない」、「母親は『兄が一番大事』って思ってるな、っていうときもあった」…家族にそんな複雑な思いを抱きながら渡ったラオスで、早也花さんは母がくれた精油に救われたのだった。
みなかみ町での娘の姿を知り、「あそこまで肉体労働をしているっていうのは初めて見ました。だからこそ購入している方に伝わればうれしいなと思います」と母・恭子さん。だが実は、ラオスに送ったラベンダーの精油が今の仕事のきっかけとなったことは、今回初めて知ったと明かす。一方、早也花さんにとっては様々な思いがあった兄の瞬さん。当時の家族の関係については「今思うと、僕中心の生活だったのかなと思う部分もあります」と振り返る。
初めて自分に自信を持てた精油の仕事で奮闘する娘へ、家族からの届け物は―
早也花さんが「この道でやっていこう」と決め、初めて自分に自信を持てた精油の仕事。今、夫婦二人三脚で奮闘する娘へ、母からの届け物は早也花さんがラオスに赴任していた時に着ていた民族衣装。早也花さんは「これを見て、初心に戻りなさいという感じなのかな…」と思わず涙がこみ上げる。そして「正直、ラオスに行くこともどう思っていたのか分からないけど、心配も応援もしてくれてたのかなと思います。多分、普通に会うと素直に言えないけど、ありがたいなって思います」と母の想いに感謝するのだった。
みなかみ町で100%天然成分の「精油」の蒸留から販売までを手掛ける
早也花さんが暮らすみなかみ町は、面積の約9割が山林という自然あふれる地域で、谷川温泉など「みなかみ18湯」と呼ばれる温泉郷がある観光地としても人気の町。その観光エリアの一角で、早也花さんはアロマの専門店「Licca」を営んでいる。
店に並ぶのは、「精油」と呼ばれるエッセンシャルオイル。精油は、スギやヒノキなどの植物から抽出した100%天然成分のオイルで、主にルームフレグランスとして使用されている。
一方、早也花さんはオイルの蒸留も手掛けていて、自宅に設けた蒸留所では夫の総一郎さん(37)とともに、山で伐採した樹木などからオイルを抽出。このように蒸留から販売までを行うアロマ専門店は全国でも珍しいのだそう。
ある日は、アブラチャン、アカマツ、スギ、ユズを蒸留し、オイルを抽出することに。アブラチャンは全国の山に自生する落葉樹で、地元の人に香りがいいからと勧められ蒸留に挑戦した樹木。そして早也花さんが全国で初めてエッセンシャルオイルとして売り出したそうで、レモン系、スペアミント系、ローズ系の香りと樹木が混ざったような香りがするという。
そんな植物を材料に、自作の蒸留器を使い地道な作業で精油を抽出していくが、外気温が低い冬は1日8時間の蒸留が精いっぱい。しかも完成した精油は、一番多いアカマツで約70ml、アブラチャンにいたってはわずか約9mlだった。価格は抽出量が少ない分、どうしても高価になってしまうという。
青年海外協力隊としてラオスに赴任するも…母がくれた精油が人生を大きく変える
中学生の頃から海外に興味があった早也花さんは、大学卒業後、JICAに応募。青年海外協力隊としてラオスへ渡った。だが、ピアノ指導者の資格を活かして赴任したものの、待っていたのは思い描いていた理想とはかけ離れた現実。そのギャップに悩まされた早也花さんはストレスで不眠症になってしまう。
そんなとき、母から届いたのがラベンダーの精油。「寝られないときはラベンダーがいいらしい」と送ってくれたものだったが、これが人生を大きく変えることに。
帰国後、辛い時に助けられた香りを仕事にしたいと、アロマテラピーインストラクターの資格を取得。そして青年海外協力隊で知り合った総一郎さんと結婚し、水がきれいで植物も豊かな、エッセンシャルオイル作りにはもってこいのみなかみ町に移住したのだった。
今はやりたい事を見つけ、充実した日々を送る早也花さんだが、実は家族にも言えず抱えていた思いがあった。21歳の時、ウガンダ留学を決意したものの両親から大反対されたときのこと。まさかの反対に遭ったことで、「誰にも応援されていない」という気持ちが頭をもたげるようになったという。いつも家族の中心にいたのは、スポーツ万能の兄。小さい頃からサッカーで活躍する兄を自慢に思う反面、「ずっと劣等感があったし、自分には何もないと思っていた。だからウガンダを自分の目的にしようとしていたのかもしれない」、「母親は『兄が一番大事』って思ってるな、っていうときもあった」…家族にそんな複雑な思いを抱きながら渡ったラオスで、早也花さんは母がくれた精油に救われたのだった。
みなかみ町での娘の姿を知り、「あそこまで肉体労働をしているっていうのは初めて見ました。だからこそ購入している方に伝わればうれしいなと思います」と母・恭子さん。だが実は、ラオスに送ったラベンダーの精油が今の仕事のきっかけとなったことは、今回初めて知ったと明かす。一方、早也花さんにとっては様々な思いがあった兄の瞬さん。当時の家族の関係については「今思うと、僕中心の生活だったのかなと思う部分もあります」と振り返る。
初めて自分に自信を持てた精油の仕事で奮闘する娘へ、家族からの届け物は―
早也花さんが「この道でやっていこう」と決め、初めて自分に自信を持てた精油の仕事。今、夫婦二人三脚で奮闘する娘へ、母からの届け物は早也花さんがラオスに赴任していた時に着ていた民族衣装。早也花さんは「これを見て、初心に戻りなさいという感じなのかな…」と思わず涙がこみ上げる。そして「正直、ラオスに行くこともどう思っていたのか分からないけど、心配も応援もしてくれてたのかなと思います。多分、普通に会うと素直に言えないけど、ありがたいなって思います」と母の想いに感謝するのだった。