人類は核を廃絶できるのか?そして“ショウ様”の独特キャラにも注目だ!
2022.12.14
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世界唯一の被爆国として平和を訴えてきた日本。だがロシアによるウクライナ侵攻や、もはや日常化した北朝鮮のミサイル発射で、私たちも核について考えざるを得なくなってきた。12月11日放送の「そこまで言って委員会NP」では、「今こそ核について考える」と題し、核シェアリングや核戦争の可能性などを議論した。
今回は、ゲストとして京都大学出身で素粒子物理学者・理学博士の多田将氏が初登場。丸顔に金色のロン毛という研究者らしからぬルックスで、黄色いネクタイにブルーのシャツ、ダブルのジャケット、テカテカのパンツにブーツという、ものすごいスタイルで現れた。
今回は、ゲストとして京都大学出身で素粒子物理学者・理学博士の多田将氏が初登場。丸顔に金色のロン毛という研究者らしからぬルックスで、黄色いネクタイにブルーのシャツ、ダブルのジャケット、テカテカのパンツにブーツという、ものすごいスタイルで現れた。
©ytv
番組議長・黒木千晶アナも「どう突っ込めばいいのかわからないが…」と戸惑う。
ただ、黒木アナが普段の仕事を聞くと、
「物理学の研究所に勤めており、素粒子物理学の研究している。今日のテーマである核兵器は正確には“原子核兵器”。原子核のエネルギーを解放することで、大きな力を得る。その原子核よりもっと小さな構造である素粒子、特に“ニュートリノ”を研究している。」と、きちんとした答え。
「喋ったら普通の人。」と黒木アナもようやくホッとしていた。
その後、番組では黒木アナの振りもあって、多田氏は”ショウ様”と呼ばれ、彼をご意見番として議論は進んだ。
もっとも興味深かったのが「人類は核廃絶ができるか、できないか」の議論。ほとんどの論客たちが「できない」と答え、ショウ様も「廃絶できるのは核兵器より優れた武器が開発された時だけだ」と主張する中、宮家邦彦氏(立命館大学 客員教授)は「できる」と回答。
「核兵器より強力な兵器を作っても、核兵器はなくならない。バズーカ砲が発明されてもピストルやナイフが残っているように。そうではなく、遠距離からピャーっとかけたら核物質が鉛になっちゃうようなそんな新兵器があれば、核は使えなくなるじゃないですか」
この荒唐無稽とも思える意見に対しショウ様は意外にも、以下のように回答する。
「ある論文によると、大量のニュートリノを核物質に浴びせれば、核兵器に使われているプルトニウムなどを別の同位体に変化させ、無効化することができるという。そういう意味では、不可能ではない。だが、そのために必要なニュートリノの量は、いま人類が作れる量の何桁も上なので、“原理的にはできる”としか言いようがない。」いまひとつ現実的ではないようだ。
続いて軍事ジャーナリスト・井上和彦氏がショウ様に質問。
「核兵器は起爆しない限りは、 有効にならない。起爆させないようにする防御兵器ができた時、核兵器が無効化されるのでは?」
ショウ様が答える。
「冷戦時代にあった対弾道弾システムがそれ。中性子爆弾を弾頭に入れて迎撃し、中性子を放出することで起爆装置をダメにしようというものだが、中性子が放出されても核汚染は起きるので、よい方法とは言えないだろう。ただ将来的な技術で、電子的に止める方法などは、開発を諦めるべきではないと思う。」
ここからは「廃絶できない」と答えた論客たちの意見が飛び交った。どの論客も決して投げやりに言っているわけではなく、世界情勢を見て現実的に考えると、核廃絶は難しいとの真剣な意見だ。
意見が出尽くしたところで、岡部芳彦氏(神戸学院大学教授・ウクライナ研究会 会長)がショウ様に聞く。
「ショウ様は日本でも数少ないウクライナにある『戦略的ロケット軍博物館』に2回も行ったことがある方。核兵器を放棄したウクライナをどう見たのか?」
ショウ様はこう答えた。
「博物館はキエフから300キロ南、トウモロコシ畑と小麦畑とヒマワリ畑しかないところを延々走った場所にある。そこには大陸間弾道弾ミサイルの発射基地もそのまま残っている。しかし、ウクライナの核兵器は“持っていても仕方のない核兵器”。ウクライナにあったのは、アメリカに向けた大陸間弾道弾(ICBM)。だが現在のウクライナの脅威は、ロシア。だから、ICBMを持っていても仕方がなくなった。さらに、核施設の指揮権はロシアが独占していた。要はロシアが勝手に対アメリカのために置いていただけ。平和主義で自主的に廃棄したわけでは、必ずしもない。」
岡部氏がもう一つ質問。
「2025年ぐらいにほとんどの攻撃兵器は、ドローン化されると言われている。そういう社会が来るなら核兵器はなくなっていくのか。」
またショウ様が回答。
「新しい兵器が出るたびにゲームチェンジャーと言われるが、正直、ゲームチェンジャーと言えるのは歴史上、核兵器ぐらいしかない。今回の侵攻でも、ものすごい数のドローンが使われているが、結局ウクライナがロシアを追い返したのは、戦車などの従来の兵器を使う人間の力。科学がどれだけ進んでも、やっぱり人間が戦うというのは変わらないと思う。」
ここで黒木アナが究極の質問。
「ショウ様1人でも、材料が揃っていれば核兵器は作れるのか。」
ショウ様は、「設備があればね。」と答える。
山口真由氏(信州大学 特任教授)が続いて聞く。
「じゃあショウ様を誘拐してどこかの独裁者が設備を用意したら作れる?」
ショウ様は笑いながら「テロ関係の映画では、大体が物理学者を誘拐して核兵器を無理やり作らせる展開になる。」と言った。断言こそしなかったが、否定しなかったところを見ると、可能性はあるのかもしれない…。
実際、ショウ様のキャラは特撮映画に出てきても全く違和感のないほどの独特の雰囲気。いやはや、「委員会」にまたクセの強いキャラクターが加わって、他番組では聞けない議論とともに益々面白くなりそうだ。
【文:境治】
ただ、黒木アナが普段の仕事を聞くと、
「物理学の研究所に勤めており、素粒子物理学の研究している。今日のテーマである核兵器は正確には“原子核兵器”。原子核のエネルギーを解放することで、大きな力を得る。その原子核よりもっと小さな構造である素粒子、特に“ニュートリノ”を研究している。」と、きちんとした答え。
「喋ったら普通の人。」と黒木アナもようやくホッとしていた。
その後、番組では黒木アナの振りもあって、多田氏は”ショウ様”と呼ばれ、彼をご意見番として議論は進んだ。
もっとも興味深かったのが「人類は核廃絶ができるか、できないか」の議論。ほとんどの論客たちが「できない」と答え、ショウ様も「廃絶できるのは核兵器より優れた武器が開発された時だけだ」と主張する中、宮家邦彦氏(立命館大学 客員教授)は「できる」と回答。
「核兵器より強力な兵器を作っても、核兵器はなくならない。バズーカ砲が発明されてもピストルやナイフが残っているように。そうではなく、遠距離からピャーっとかけたら核物質が鉛になっちゃうようなそんな新兵器があれば、核は使えなくなるじゃないですか」
この荒唐無稽とも思える意見に対しショウ様は意外にも、以下のように回答する。
「ある論文によると、大量のニュートリノを核物質に浴びせれば、核兵器に使われているプルトニウムなどを別の同位体に変化させ、無効化することができるという。そういう意味では、不可能ではない。だが、そのために必要なニュートリノの量は、いま人類が作れる量の何桁も上なので、“原理的にはできる”としか言いようがない。」いまひとつ現実的ではないようだ。
続いて軍事ジャーナリスト・井上和彦氏がショウ様に質問。
「核兵器は起爆しない限りは、 有効にならない。起爆させないようにする防御兵器ができた時、核兵器が無効化されるのでは?」
ショウ様が答える。
「冷戦時代にあった対弾道弾システムがそれ。中性子爆弾を弾頭に入れて迎撃し、中性子を放出することで起爆装置をダメにしようというものだが、中性子が放出されても核汚染は起きるので、よい方法とは言えないだろう。ただ将来的な技術で、電子的に止める方法などは、開発を諦めるべきではないと思う。」
ここからは「廃絶できない」と答えた論客たちの意見が飛び交った。どの論客も決して投げやりに言っているわけではなく、世界情勢を見て現実的に考えると、核廃絶は難しいとの真剣な意見だ。
意見が出尽くしたところで、岡部芳彦氏(神戸学院大学教授・ウクライナ研究会 会長)がショウ様に聞く。
「ショウ様は日本でも数少ないウクライナにある『戦略的ロケット軍博物館』に2回も行ったことがある方。核兵器を放棄したウクライナをどう見たのか?」
ショウ様はこう答えた。
「博物館はキエフから300キロ南、トウモロコシ畑と小麦畑とヒマワリ畑しかないところを延々走った場所にある。そこには大陸間弾道弾ミサイルの発射基地もそのまま残っている。しかし、ウクライナの核兵器は“持っていても仕方のない核兵器”。ウクライナにあったのは、アメリカに向けた大陸間弾道弾(ICBM)。だが現在のウクライナの脅威は、ロシア。だから、ICBMを持っていても仕方がなくなった。さらに、核施設の指揮権はロシアが独占していた。要はロシアが勝手に対アメリカのために置いていただけ。平和主義で自主的に廃棄したわけでは、必ずしもない。」
岡部氏がもう一つ質問。
「2025年ぐらいにほとんどの攻撃兵器は、ドローン化されると言われている。そういう社会が来るなら核兵器はなくなっていくのか。」
またショウ様が回答。
「新しい兵器が出るたびにゲームチェンジャーと言われるが、正直、ゲームチェンジャーと言えるのは歴史上、核兵器ぐらいしかない。今回の侵攻でも、ものすごい数のドローンが使われているが、結局ウクライナがロシアを追い返したのは、戦車などの従来の兵器を使う人間の力。科学がどれだけ進んでも、やっぱり人間が戦うというのは変わらないと思う。」
ここで黒木アナが究極の質問。
「ショウ様1人でも、材料が揃っていれば核兵器は作れるのか。」
ショウ様は、「設備があればね。」と答える。
山口真由氏(信州大学 特任教授)が続いて聞く。
「じゃあショウ様を誘拐してどこかの独裁者が設備を用意したら作れる?」
ショウ様は笑いながら「テロ関係の映画では、大体が物理学者を誘拐して核兵器を無理やり作らせる展開になる。」と言った。断言こそしなかったが、否定しなかったところを見ると、可能性はあるのかもしれない…。
実際、ショウ様のキャラは特撮映画に出てきても全く違和感のないほどの独特の雰囲気。いやはや、「委員会」にまたクセの強いキャラクターが加わって、他番組では聞けない議論とともに益々面白くなりそうだ。
【文:境治】
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