旧統一教会と向き合って30年以上…紀藤弁護士の悩みは深く重い

2022.10.05

旧統一教会と向き合って30年以上…紀藤弁護士の悩みは深く重い
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10月2日放送の『そこまで言って委員会NP』は「先生の苦悩大放出SP」と題して医者や政治家など先生と呼ばれる人々の苦悩を掘り起こす企画。先生たちの苦悩に共感できるかどうかを議論した。中でも、時の人・紀藤正樹弁護士が登場したパートは盛り上がり、途中からは論客たちの質問に紀藤氏が答える形になった。ここでは、紀藤氏の回答を再録してみたい。

まずは、「最近の弁護士は“割に合わない”仕事になっているのでは」という質問。紀藤氏はこう答えた。
「それは周りでも聞くが、私は真面目に弁護士をやっていたら、 食えないことはないと思う。私もほとんどお金がもらえない事件を 結構やったが、そういう依頼を持ってきた人は、申し訳ない、という気持ちで今度はお金になる仕事を紹介してくれたりする。トータルすると、結局ペイする。真面目に1件1件の仕事をしていくことが大事で、目先の仕事にこだわるから、逆に食えなくなる。そんな印象を持っている。」

次に「誹謗中傷はあるか。」という質問。紀藤氏もこれには苦労している様子だ。
「カルト的な宗教団体と向き合うと、いろんな誹謗中傷がある。闇金の事件をたくさん扱っていた時は、私の顔写真入りで『事務所に押しかけるぞ』というファックスが送られてきたり、街宣車を回されたこともある。私は好奇心が強い方なので、そういう街宣の人にも声をかけたりするが、周りにいる弁護士や事務員は怖がる。自分にとって影響がなくても、周りの人に影響を与えることに問題がある。被害者への誹謗中傷も全く同じで、私はどんなに誹謗中傷されても、それを受け止める覚悟で弁護士をやっているが、私の依頼者は一般の市民。そんな方が誹謗中傷を受けたりフェイクを書かれたらどうやって守るのかまで考えると、いたたまれない思いになる。」

続いて門田隆将氏(作家)が、自身も『週刊新潮』時代に追っていた旧統一教会について質問。
「政治家との関係が問題になっているが、国民がそっちの方ばかりに動かされていることをどう思うか。」と聞いた。
これに紀藤氏はこう答えた。
「この問題は、2つの論点に分かれる。1つは反社会性がある団体との付き合い方。 もう1つは海外発の団体との付き合い方。この2つの論点は、切り分けが必要。仮に反社会的な集団でなくても、韓国発の団体が正体を隠して政治家に近づき何らかの政治的な活動をしていても外から見えない。民主主義国家の中で選挙を通じた選択をする時に、 市民に見えにくい関係性とは何なのか?との議論が当然ある。アメリカには「ロビイスト規制法」がある。海外から政権に対して強い影響が及ぶことには問題があるので、ロビイストの登録をさせる。登録できなければ政治家も付き合えない。フランスにも当然ある。ところが日本にはない。統一教会員がいろんな団体を名乗って政治家に近づくと、政治家も判断できない。場合によっては大臣室まで入ってくる。日本の民主主義国家のあり方として、やはり問題があるのではないか。多くの国民が不安に思っていることは事実だと思う。」
門田氏がさらに聞く。「旧統一教会は今でも“反社会的団体”なのか?私から見ると30年前とはかなり違うと思うのだが。」
紀藤氏は淡々とこう答える。
「私は過去とあまり変わってないと思う。一見、物品による霊感商法が減っているように思えるが、実際にはそれが献金という、モノを介在しない形に変わっている。(教団の)売り上げは変わっていない。同時に家族被害も非常に深刻。家族被害はお金で計算できない。そして裁判で勝てない。例えば教団に勧誘されたAさんが、家族のBさん、Cさんに金銭、その他の損害を及ぼしたとして、被害者のBさんCさんが旧統一教会を訴えても勝てない。仮に損害賠償が認められたとしてもそれは慰謝料くらいにしかならず、おそらく数十万とか数百万。やっぱり旧統一教会の事件は、根深い。」

番組議長・黒木千晶アナも質問。
「根本的に被害者を救済するための法律、例えば宗教法人として存在を見直すことも必要か。」
紀藤氏は「そう思っている。」と回答。「旧統一教会は結局、宗教法人格を乱用している一種の勢力。宗教法人格はメリットが大きい。国からお墨付きを受けているし、他の国と違うのが100パーセントの免税資格を得られること。免税資格と宗教法人格は、ワンセットになっていて、文化庁宗務課が認証すれば、国税庁とは関係がなく免税資格を得る。宗教法人法を改正する必要はなく、むしろ法人税法を改正して、この仕組みは改めるべきだと思う。」
さらに黒木アナが「旧統一教会の問題のゴールはどこになるか。」と聞いた。
「被害者救済が現実にできることが基本的なゴールで、過去の被害者も含めて救済してほしいと思う。物品や献金、家族被害を問わず、過去の被害にきちんと今の統一教会が向き合って解決する道筋をつけなければ、結局、大本は変わらない。過去の被害には全く向き合おうとせず、自分たちはやっていない、信者が勝手にやっていると言う。この言い分は社会的に通用しない。過去のことにきちんと決別できるなら、教団の存続は社会的に許されるのかもしれないが、まだ決別ができていない状態にあると思う。」と紀藤氏は答えた。他の番組では聞けない紀藤氏の理念にも触れられた時間だった。

【文:境治】
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