ふくめんってどんな麺?福麺じゃなくて覆面?宇和島市の不思議なハレの日グルメ!

2021.03.19

ふくめんってどんな麺?福麺じゃなくて覆面?宇和島市の不思議なハレの日グルメ!
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私たちの暮らしの中で「祝い事」はとても大切。この時期だと、卒業や引越しなど春ならではのお祝いをする家も多いだろう。そしてお祝いには料理がつきもの。その土地に伝わる独特の料理で祝うのだ。

愛媛県宇和島市は養殖真鯛の生産量が日本一。当然、祝い事には鯛を出すのだが、それとは別に欠かせない料理があるという。その名も「ふくめん」。そんなの初めて聞いたが、名前から「福麺」を連想し、なんだかおめでたいムードが漂う。宇和島の人びとに聞くと、「おもてなしに使う料理」そして「キレイ」で「華やか」と言うのだが、「ダーツの的のような」と謎めいた表現をする人もいる。
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そこで宇和島市のあるお宅で、ご夫婦の喜寿をみんなでご馳走を囲んで祝う様子を取材した。もちろんテーブルには鯛丸ごと一匹のお造りなどが豪華に並んでいる。そこへおかあさんが「ふくめんできたよー!」と大きなお皿を持ってきた。みんな拍手で迎えるそのお皿は、丸い料理が十字で4つに割られて色がついている。白と紅、黄色と緑。たしかにキレイで華やかだ。だからダーツなのか。
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この美しい4色のお皿を、喜寿を迎えた主役のご夫婦が持って、それをみんなが写真に撮っている。ん?なんで写真?

「撮っとかんと崩したら目も当てられんなるもんね」

え?せっかくキレイなのに崩しちゃうの?おかあさんがおもむろにふくめんに箸を突き刺し、ほんとうに崩し始めた。美しい色の下から現れたのは、薄黒く地味な糸こんにゃく!えー!ふくめんの麺は糸こんにゃくだったの?驚きをよそにおかあさんが崩し終わると、さっきの華やかさはすっかりこんにゃく色に変わってしまった。たしかに、目も当てられん!
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だが、この見た目のよろしくないふくめんを、家族が一斉にばくばくとおいしそうに食べている。紅白はお魚から作ったでんぶで、緑はネギ、そして黄色はなんとみかんなのだ。糸こんにゃくには甘く味付けしてあり、さっぱりと食べやすいのだそうだ。「ヘルシーですよ、なんぼ食べても太りません。痩せとるでしょ?」と自分を指して笑うおばあちゃん。はい、その通りです!

それにしてもハレの日にこんにゃくってどうなのか。そう聞くとおかあさんが言うには、「だからふくめんで隠しとるじゃないですか。こんにゃくを隠しとるけん、覆面。」ええー?!「ふくめん」は「福麺」じゃなくて「覆面」の意味だったの?
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それにしても、ふくめんはどのように生まれたのか。老舗割烹・丸水の3代目主人、土居真輔さんが教えてくれた。
「江戸時代に飢饉があった時、こんにゃく芋がよく取れて作られたと聞いております」。4色の盛り付けは明治になってからで、それぞれの色を春夏秋冬に見立て、ハレの日の料理として振る舞われるようになったそうだ。

さっきのお宅に戻ると、お祝いが終わり、余ったふくめんを小皿に分けている。そこになぜか、お箸を十字に置いてるぞ!小さなお皿の糸こんにゃくに再び4つの具を盛り付けて「ミニふくめん」を作っているのだ。かわいいなあ!
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これはさすがにこのまま食べるのだろうと思ったが、やっぱり混ぜて食べるんだって。どうしても崩して目も当てられん姿にしたいのね。

【文:境 治】
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