バー経営者と公務員。“二刀流”同士の異色コンビ「骨付きバナナ」が見すえる今後

2023.07.13

バー経営者と公務員。“二刀流”同士の異色コンビ「骨付きバナナ」が見すえる今後
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大阪・ミナミでバーを経営するうえしさん(30)と現役公務員のこうだいさん(27)のコンビ「骨付きバナナ」。芸人との“二刀流”をそれぞれが実践する異色コンビでもありますが、コント、漫才ともにハイスペックなネタの強さでも注目されています。他に類を見ない二人が考える“武器”と“今後”とは。

―ともに“別の顔”を持つ珍しいコンビだとも思いますが、結成に至るまでの流れは?

うえし:僕は大学を出て3年ほど企業の営業マンをしていました。結構大きな会社で待遇的にも恵まれていたんですけど、お笑いに対する思いがおさえきれなくなった。そこがこの世界に入るきっかけでした。

基本的に人を笑わせるのが大好きな人間で、学校でも学級委員をやり、生徒会をやり、部活動でもキャプテンをし、バンドでもリーダーを務める。いわゆる完全なる“陽キャラ”だったんです。

その思いのまま就職し、気づくと、わずかな営業の合間でも、本を読むわけでもなく、タバコを吸うわけでもなく、
漫才台本を書いている自分がいたんです。誰か相方がいるわけでもないですし、発表する場があるわけでもない。それなのに、台本を書いている。

もう、こうなったら、ホントにその世界に飛び込むしか自分の思いを保つことができなくなる。我慢がもうできなくなった。そんな感覚で会社を辞め、松竹芸能の養成所に入りました。それが2019年の春でした。


そのタイミングで以前からやりたいと思っていたバー経営にも乗り出し、養成所入所と同時に大阪・ミナミにバーをオープンさせたんです。
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(左から)うえしさん(30)こうだいさん(27)
こうだい:僕はもともと人前に出るのが好きなタイプではなかったんですけど、高校でそういうことが好きな同級生に導かれて学校で漫才をしたりするようになりました。

その中で笑ってもらう快感を覚えるようになり、大学に進学してからも学生漫才的なことはやっていたんですけど、卒業後は公務員試験を受けて今の仕事に就きました。

ただ、実際に働き始めて思ったのが、この先の自分の姿が見えるという感覚だったんです。自分より20歳、30歳上の方が働いてらっしゃる。もちろん、その方々を否定するようなことは一切ないんですけど、20年後の自分はこういう感じか。30年後の自分はこうなっているのかな。そんな思いが個人的にしんどくなってきて、松竹芸能の養成所に通うようになったんです。そこで今のコンビを組むことになりました。

養成所を卒業して、松竹芸能に所属していわゆるプロとしてやるとなると、当然、公務員としてのルールを考えないといけなくなります。原則、副業禁止というのがあるんですけど、職場の許可をもらえば、状況に応じて許されるという規定もありまして。

あからさまに他の会社の役員になるとか、そういうものはダメだけれど、芸人というのは前例がない。それをどう判断するかなんですが、僕の場合はそこを認めてもらって芸人をしている。それが今の状況なんです。  


―ただ、朝から夜まで毎日働くお仕事だし、芸人としての時間を確保するのも大変では?

こうだい:ベースとして、活動するのは休みの日か仕事が終わってから。あとは、有給休暇を取得して芸人の仕事をすることになります。

テレビ出演など出演料が発生するお仕事は事前に職場に申請をして、出演するという形になっています。
有給休暇は年間20日あるんですけど、それを仕事が入る度に何時間ずつか使って、去年は20日分の有給休暇の残り香45分というギリギリの状況でもありました。

これを超えて芸人の仕事に行ってしまうと、それは欠勤という形になるので、ありがたいことに今年は去年よりお仕事もいただけているので、もう両立をどうするのかをしっかり考えないといけない時期に入っているとは思っています。
―それぞれ仕事があり、それぞれ仕事の時間がほぼ逆。ネタ合わせなどの時間を取るのに苦労するのでは?

うえし:それは完全にそうですね。相方は平日の午前9時頃から午後6時頃までが仕事ですけど、僕は午後7時頃から仕事に入りますしね。

なので、普通にしているとネタ合わせの時間が本当に取れないんです。なんとか、休みをやりくりしてやる。もしくは台本は僕が書いてるんですけど、それを予めメールなどで相方に送っておいて、出演ライブの前に集まって短時間でグッと仕上げる。そんな感じにはなっていますね。  

こうだい:大変ではありますけど、いやらしい話、僕の場合はすごく安定した収入がある。これはこれで、一つ、芸人としての活動をやりやすいところではありますし、人と違うところ全てを武器にしながらやっていければなとは思っています。

うえし:本当の意味でコンビとして注目してもらうために必須なのは、シンプルですけど賞レースで結果を出すことしかないと思っています。
今、現実的なことでいうと「M-1グランプリ」も「キングオブコント」も準々決勝までなんですけど、これをなんとか極力近い将来決勝までいく。

自分たちのネタを大きな場で見てもらう。そこで優勝できたらもちろんうれしいことですけど、優勝できなくても、そこで自分たちが面白いと思うものを見てもらう。ここを一番近いところの目標として定めています。

それこそ、相方は安定収入があるからこそ、何を買ったのか、瑛人さんの曲「香水」が流行った時に、正確に言うと、流行った少し後に5万円くらいする高級香水を買ってました(笑)。

ネタを作るのは大切なことですけど、なかなかこの踏み込みは若手にはやりにくい踏み込みだとも思いますし、費用対効果もどうなのかなとも思いましたけど(笑)。

こうだい:ま、思い出にはしっかり残りましたから(笑)。

うえし:なんとか僕らにしかできない積み重ねをして、皆さんにしってもらえるよう頑張っていきたいと思っています。


■骨付きバナナ(ほねつきばなな)
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1993年6月23日生まれのうえし(本名・上芝拓輝)と96年1月5日うまれのこうだい(本名・福居滉大)がともに松竹芸能の養成所に通っていた2019年にコンビ結成。二人とも和歌山県出身。うえしはメーカー勤務を経験した後、現在、大阪・ミナミでバーを経営。こうだいは現在も公務員として働きながら職場の許可を得て芸人活動を続けている。


執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)

1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。
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