Quadは中国の海洋進出を阻むことができるか、というビミョーな議論
2021.10.27
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北朝鮮がミサイルを発射しても驚かなくなってきた。一方、中国が日本のみならず多くの国にとって脅威になっている。安全保障について、これまでとは違う議論が必要なようだ。そこで10月24日放送の「そこまで言って委員会NP」では中国や北朝鮮の脅威にどう対処するかという、なかなかにハードなテーマで激論が行われた。
前振りのVTRの中で、番組議長・黒木千晶アナのアニメキャラに対し、番組政策秘書・野村明大アナが「クアッド驚く為五郎〜♪」という50年前のギャグを堂々とかましてスタジオが引いた中、そのQuad(日米豪印による経済と安全保障を協議する枠組み)が最初の議論の対象となった。番組からの質問は「Quadで中国の海洋進出を阻むことができると思いますか」というもの。論客たちの回答は8人中2人が「できる」6人が「できない」だった。
宮家邦彦氏はズバリ「軍事同盟ではないから阻めない」と回答。「Quadはインドを巻き込むためのもの。だがインドは元々非同盟の国で微妙だった。そこに中国がオウンゴールのようにどんどん進出して・・・」と解説していると竹田恒泰氏が割って入る。
「インドは上海協力機構にも加盟している。インドの立ち位置はどうなのか?」
「Quadはインド次第」と回答していた井上和彦氏が言うには「上海協力機構は周辺諸国がみんな加盟し取り囲まれる形になるのでインドも加盟せざるを得ない。インドの人は質問しても“ノー・プロブレム”と8の字に首を振って言う。インドの軍備は様々な国の兵器で混ぜこぜ。中立の形を作っている。上海協力機構にはイランもいるので中国はペルシア湾には抜けていける。それも含めて中国の海洋進出はインド次第だ」と詳しく解説してくれて一同なるほどとなった。
あまりに中国に詳しくて代弁者とも言われる近藤大介氏は中国の考え方を解説。「バイデン政権は“言うだけ番長”で恐れてないのでQuadで中国を阻むことはできない。Quad4か国とも中国が最大の貿易相手で、一番取引していながら何が反中同盟だと。本気度が見えない。」と述べると「やっぱりスパイなんだね。」とツッコミが入った。
須田慎一郎氏は「Quadで中国を阻むことはできないが、大きな抑止効果はある。」と主張。
「中国が外へ出るためには、沿岸部分への影響力を強めていかねばならない。日本やアメリカの発想は、リムランド(ユーラシア大陸の外洋に面した地域)と言われる沿岸周辺部分を握ろうとしている。抑止効果としては期待できる。」
一方「阻むことができる」と回答した古舘伊知郎氏は「抑止する方向でやるしかない。ASEANが中国側と割れている。日本の柔らかな外交でASEANの一部分とうまく連携し、インドがとりあえず入ったQuadが一つの抑止力になる。」
ここで須田氏が「八代さんが言うところのサプライチェーン同盟が・・」とディスり気味に八代英輝氏の名を出すと、東京からリモート出演の本人が「じゃあぼくに言わせてくださいよ」と不満げに言い、須田氏が「だから振ってるんじゃない」と釈明して場が沸いた。
八代氏は経済の視点を持ち込む。「インドは軍事同盟には慎重。経済連携にも非常に慎重。地政学的にそのインドを何とか取り込みたいので、最後に出てきたのが経済安全保障の視点だ。それにより初めてインドに関心を持ってもらえた。インドは中国の最大のお客さんだった。ただ中国がやばい国だと、インドも気づき始めて経済安全保障に関しては中国と独立したサプライチェーンを作ってなきゃいけないと、ようやく認識が一致した。」と説得力ある論を展開した。
そこに須田氏が「熊本に台湾の半導体製造大手TSMCが工場を・・・」と切り出すと、八代氏が「TSMCの話はみんなTPPの議論にとっておこうと大人の握りをしてたのに、ここで持ち出すのは子供だ。」とさっきのリベンジ的に言ったのだが須田氏はすかさず「あんたはだから×××だよ!」と切り返した。「×××」が何かは想像するしかないが、たぶんあのことだろう。
議論はこの後、そのTPPをはじめAUKUS、ファイブ・アイズ、敵基地攻撃能力となかなかヒヤヒヤするテーマで展開。議論を聞けば聞くほど、結論を出すのは難しいが安全保障の問題を本気で考える必要が出てきたのは間違いないと感じる。我々も様々な意見をしっかり頭に入れておきたいものだ。
【文:境 治】
前振りのVTRの中で、番組議長・黒木千晶アナのアニメキャラに対し、番組政策秘書・野村明大アナが「クアッド驚く為五郎〜♪」という50年前のギャグを堂々とかましてスタジオが引いた中、そのQuad(日米豪印による経済と安全保障を協議する枠組み)が最初の議論の対象となった。番組からの質問は「Quadで中国の海洋進出を阻むことができると思いますか」というもの。論客たちの回答は8人中2人が「できる」6人が「できない」だった。
宮家邦彦氏はズバリ「軍事同盟ではないから阻めない」と回答。「Quadはインドを巻き込むためのもの。だがインドは元々非同盟の国で微妙だった。そこに中国がオウンゴールのようにどんどん進出して・・・」と解説していると竹田恒泰氏が割って入る。
「インドは上海協力機構にも加盟している。インドの立ち位置はどうなのか?」
「Quadはインド次第」と回答していた井上和彦氏が言うには「上海協力機構は周辺諸国がみんな加盟し取り囲まれる形になるのでインドも加盟せざるを得ない。インドの人は質問しても“ノー・プロブレム”と8の字に首を振って言う。インドの軍備は様々な国の兵器で混ぜこぜ。中立の形を作っている。上海協力機構にはイランもいるので中国はペルシア湾には抜けていける。それも含めて中国の海洋進出はインド次第だ」と詳しく解説してくれて一同なるほどとなった。
あまりに中国に詳しくて代弁者とも言われる近藤大介氏は中国の考え方を解説。「バイデン政権は“言うだけ番長”で恐れてないのでQuadで中国を阻むことはできない。Quad4か国とも中国が最大の貿易相手で、一番取引していながら何が反中同盟だと。本気度が見えない。」と述べると「やっぱりスパイなんだね。」とツッコミが入った。
須田慎一郎氏は「Quadで中国を阻むことはできないが、大きな抑止効果はある。」と主張。
「中国が外へ出るためには、沿岸部分への影響力を強めていかねばならない。日本やアメリカの発想は、リムランド(ユーラシア大陸の外洋に面した地域)と言われる沿岸周辺部分を握ろうとしている。抑止効果としては期待できる。」
一方「阻むことができる」と回答した古舘伊知郎氏は「抑止する方向でやるしかない。ASEANが中国側と割れている。日本の柔らかな外交でASEANの一部分とうまく連携し、インドがとりあえず入ったQuadが一つの抑止力になる。」
ここで須田氏が「八代さんが言うところのサプライチェーン同盟が・・」とディスり気味に八代英輝氏の名を出すと、東京からリモート出演の本人が「じゃあぼくに言わせてくださいよ」と不満げに言い、須田氏が「だから振ってるんじゃない」と釈明して場が沸いた。
八代氏は経済の視点を持ち込む。「インドは軍事同盟には慎重。経済連携にも非常に慎重。地政学的にそのインドを何とか取り込みたいので、最後に出てきたのが経済安全保障の視点だ。それにより初めてインドに関心を持ってもらえた。インドは中国の最大のお客さんだった。ただ中国がやばい国だと、インドも気づき始めて経済安全保障に関しては中国と独立したサプライチェーンを作ってなきゃいけないと、ようやく認識が一致した。」と説得力ある論を展開した。
そこに須田氏が「熊本に台湾の半導体製造大手TSMCが工場を・・・」と切り出すと、八代氏が「TSMCの話はみんなTPPの議論にとっておこうと大人の握りをしてたのに、ここで持ち出すのは子供だ。」とさっきのリベンジ的に言ったのだが須田氏はすかさず「あんたはだから×××だよ!」と切り返した。「×××」が何かは想像するしかないが、たぶんあのことだろう。
議論はこの後、そのTPPをはじめAUKUS、ファイブ・アイズ、敵基地攻撃能力となかなかヒヤヒヤするテーマで展開。議論を聞けば聞くほど、結論を出すのは難しいが安全保障の問題を本気で考える必要が出てきたのは間違いないと感じる。我々も様々な意見をしっかり頭に入れておきたいものだ。
【文:境 治】
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